これまでのあらすじ

『病迷悪夢』
1章.病迷悪夢読者3989 評価34 分岐1
2章.病名不明の病読者1143 評価7 分岐1
3章.夢ギルドでの再会読者757 評価3 分岐1
4章.先輩読者632 評価2 分岐1
5章.影裏読者487 評価0 分岐1
6章.復讐読者508 評価0 分岐2
7章.出会い読者541 評価0 分岐1
8章.植物読者495 評価1 分岐1
9章.初依頼読者402 評価0 分岐1
10章.指名手配の悪夢を探して読者476 評価2 分岐1
11章.交戦開始読者414 評価0 分岐1
12章.交戦後__読者385 評価0 分岐1
13章.初依頼達成読者432 評価0 分岐1
14章.復讐に燃えて読者359 評価0 分岐2
15章.夢の病の裏。読者372 評価2 分岐1
16章.特訓開始読者456 評価0 分岐1
17章.二日目の海にて..読者410 評価0 分岐1
18章.棘葉と拳読者359 評価0 分岐1
19章.来訪、そして女子組入浴読者376 評価7 分岐1
20章.少女入浴中読者356 評価0 分岐1
21章.特訓最終日読者305 評価0 分岐1
22章.影裏のプライド読者350 評価0 分岐1
23章.暗き夜の妖精は夢を見るのか読者325 評価0 分岐1
24章.小さき姫は何を思う読者337 評価0 分岐1
25章.遂に開幕読者318 評価0 分岐1
26章.一回戦開始読者362 評価0 分岐1
27章.速けりゃいいってもんじゃない読者367 評価3 分岐2
28章.二回戦読者314 評価0 分岐1
29章.Bブロック一回戦読者345 評価3 分岐1
30章.有利的な展開読者302 評価0 分岐1
31章.属性?能力?そんなものは読者357 評価2 分岐1
32章.形勢逆転読者268 評価0 分岐1
33章.Bブロック一回戦、終了後読者342 評価2 分岐1
34章.四回戦読者367 評価0 分岐1
35章.反撃開始読者332 評価0 分岐1
36章.夢と現、誠と現読者292 評価0 分岐1
37章.次の試合。どうなる事やら読者300 評価0 分岐1
38章.魂削り取る者読者284 評価0 分岐1
39章.Bブロック二回戦読者372 評価4 分岐1
40章.Gブロック読者302 評価0 分岐1
41章.波乱の幕開け?読者316 評価0 分岐1
42章.Aブロック二回戦決着読者273 評価0 分岐1
43章.光操る者、魂削る者読者278 評価0 分岐1
44章.Bブロック決着読者284 評価0 分岐1
45章.残酷さがある者程____読者324 評価0 分岐1
46章.宿命読者330 評価0 分岐1
47章.棘葉の怒り読者514 評価0 分岐1
48章.メアのアドバイス読者306 評価0 分岐1
49章.Eブロック二回戦白熱読者329 評価1 分岐1
50章.Gブロック読者473 評価0 分岐1
51章.三回戦読者256 評価0 分岐1
52章.メアと阿須魔読者272 評価0 分岐1
53章.これが俺の能力読者379 評価0 分岐1
54章.Eブロック決着読者332 評価0 分岐1
55章.人間か、妖怪か?読者286 評価2 分岐1
56章.準々決勝読者333 評価0 分岐1
57章.魂対炎読者242 評価0 分岐1
58章.襲い狂う魂読者296 評価0 分岐1
59章.オメガオーラ読者384 評価0 分岐1
60章.月崎神の謎読者275 評価0 分岐1
61章.少女が視た未来読者342 評価2 分岐1
62章.現の想い、メアの悪感読者339 評価0 分岐1
63章.烈華と黒い音読者334 評価0 分岐1
64章.古の音色読者389 評価0 分岐1
65章.光と植物読者286 評価0 分岐1
66章.襲い来るメデューサと奇跡のサルビア読者479 評価1 分岐1
67章.溶岩と闇読者458 評価0 分岐1
68章.黒きオメガオーラ読者581 評価0 分岐1
69章.圧倒的読者324 評価0 分岐1
70章.最悪の未来が読者306 評価0 分岐1
71章.準決勝前夜読者278 評価0 分岐1
72章.準決勝開始 音塊に取りつかれた少女読者504 評価1 分岐1
73章.災いの暴食読者312 評価0 分岐1
74章.絶体絶命の危機読者266 評価0 分岐1
75章.災厄……読者453 評価1 分岐1
76章.音塊読者427 評価0 分岐1
77章.闘技場半壊読者322 評価1 分岐1
78章.開幕....読者373 評価2 分岐1
79章.限界の覚醒読者293 評価0 分岐1
80章.反劇読者425 評価0 分岐1
81章.静め始める音塊読者323 評価0 分岐1
82章.悪意の予感読者580 評価0 分岐1
83章.偽の実力、真の実力は?読者549 評価0 分岐1
84章.思い出し読者632 評価0 分岐1
85章.準決勝、二回戦読者423 評価0 分岐1
86章.闇の力読者290 評価0 分岐1
87章.オメガオーラvsオメガオーラ読者519 評価0 分岐1
88章.決勝へ読者299 評価0 分岐1
89章.決勝戦__敵の襲来読者282 評価0 分岐1
90章.試合開始読者302 評価0 分岐1
91章.影裏の過去読者559 評価0 分岐1
92章.決着読者317 評価0 分岐1
93章.決戦、開始読者532 評価0 分岐1
94章.激突読者346 評価0 分岐1
95章.炎vs雷土の猛者読者249 評価0 分岐1
96章.恐ろしき予知読者273 評価2 分岐1
97章.合流読者329 評価0 分岐1
98章.状況は更に上昇して読者248 評価0 分岐1
99章.闇の英雄(ヒーロー)読者455 評価0 分岐1
100章.花が咲く読者313 評価1 分岐1
101章.決着、聞きたい事、更なる襲来読者665 評価0 分岐1
102章.バクの目的読者317 評価2 分岐1
103章.任命読者450 評価1 分岐1
104章.十二騎士の選出読者606 評価2 分岐1
105章.迫り来る悪読者458 評価1 分岐1
106章.調査、遭遇読者375 評価0 分岐1
107章.ジルヘ到着読者526 評価0 分岐1
108章.ジルヘ____無酸素の草原読者524 評価0 分岐1
109章.洞窟の先へ読者648 評価0 分岐1
110章.採掘開始読者555 評価0 分岐1
111章.猛毒のオージュ読者417 評価0 分岐1
112章.デッドリーポイズン・ユニオン読者450 評価0 分岐1
113章.ゴーストの力読者507 評価0 分岐1
114章.ギルド帰還読者452 評価0 分岐1
115章.夢星祭読者322 評価1 分岐1
116章.祭りの始まり読者805 評価0 分岐1
117章.ついに始まる神輿バトル読者305 評価0 分岐1
118章.夢星祭恒例行事読者391 評価2 分岐1
119章.極寒では済まされない場所への行き方読者336 評価1 分岐1
120章.悠と烈華読者289 評価0 分岐1
121章.雪の下読者288 評価0 分岐1
122章.雪の民読者284 評価0 分岐1
123章.捜索読者273 評価0 分岐1
124章.雪の民と少女二人読者541 評価0 分岐1
125章.Battle of the snowy field………start!!読者288 評価0 分岐1
126章.悪夢的な妻たち読者353 評価1 分岐1
127章.襲撃読者343 評価0 分岐1
128章.雪山頂上決戦読者269 評価0 分岐1
129章.島へバカンス読者578 評価1 分岐1
130章.出会いは水上スキーに乗って読者615 評価0 分岐1
131章.海へ読者435 評価0 分岐1
132章.独占関白読者260 評価0 分岐1
133章.決戦の時読者616 評価2 分岐1
134章.第二妻、モノン読者438 評価0 分岐1
135章.vs名無し読者276 評価0 分岐1
136章.独占を止めろ読者478 評価0 分岐1
137章.嫉妬読者552 評価0 分岐1
138章.空の国とは一体?読者286 評価0 分岐1
139章.空の国の試練読者533 評価0 分岐1
140章.天罰もとい試練、の序章読者651 評価0 分岐1
141章.九天山のトラップ読者315 評価0 分岐1
142章.雷降は神の天罰なり読者283 評価0 分岐1
143章.老師読者408 評価0 分岐1
144章.ソニッカ襲来読者382 評価0 分岐1
145章.巨漢の悪夢読者296 評価1 分岐1
146章.GRAVITY 読者341 評価0 分岐1
147章.バクとの連絡読者298 評価0 分岐1
148章.雷鳴神読者295 評価0 分岐1
149章.重力に逆らえる者は神のみか?読者317 評価0 分岐1
150章.神(ゴッド)の力読者439 評価0 分岐1
151章.4つ目の石、少しの休息読者580 評価1 分岐1
152章.宿泊、そして入浴読者709 評価1 分岐1
153章.入浴と恋話読者444 評価1 分岐1
154章.いじめとメアの夢読者435 評価1 分岐1
155章.病迷の科学読者840 評価0 分岐1
156章.ネックレスの秘密読者436 評価0 分岐1
157章.黄金の野望読者403 評価1 分岐1
158章.カジノは本当に楽園なのか?読者580 評価2 分岐1
159章.死のカーニバル読者264 評価0 分岐1
160章.カジノシティ読者346 評価0 分岐1
161章.ギャンブルの沼へ読者466 評価0 分岐1
162章.恐ろしい罠読者456 評価0 分岐1
163章.ロシアンバトル開始読者476 評価0 分岐1
164章.帝斗vsケルベロス読者385 評価0 分岐1
165章.三首を討ち給え読者375 評価2 分岐1
166章.ロシアンバトル第2戦読者380 評価0 分岐1
167章.もしかしてデレたの?読者520 評価1 分岐1
168章.深緑と深い霧読者364 評価0 分岐1
169章.深緑の襲来読者760 評価1 分岐1
170章.ユメノチカラ読者423 評価0 分岐1
171章.死闘開戦読者364 評価0 分岐1
172章.闇は始終存在する読者367 評価2 分岐1
173章.ルビーvs烈華読者466 評価1 分岐1
174章.天照の加護の許読者855 評価0 分岐1
175章.どうせイカサマだし読者311 評価2 分岐1
176章.ガスの力vsモノン&小姫読者487 評価1 分岐1
177章.小姫覚醒…!?読者273 評価1 分岐1
178章.姫を目覚めさせるのは王子様だけ読者352 評価1 分岐1
179章.拳vsシルバー!!読者271 評価0 分岐1
180章.悪夢の混血読者743 評価3 分岐1
181章.ゲームは最終戦へ読者268 評価0 分岐1
182章.足りてないもの読者281 評価2 分岐1
183章.秘められた其の姿読者261 評価0 分岐1
184章.襲撃読者528 評価0 分岐1
185章.内側って意外と脆い読者262 評価1 分岐1
186章.時裂の塔読者412 評価0 分岐1
187章.過去読者235 評価1 分岐1
188章.人間狩りの始まり読者367 評価0 分岐1
189章.時裂の塔は疲労が溜まる読者366 評価0 分岐1
190章.三世石を触れて読者252 評価0 分岐1
191章.過去の世でも戦闘有り読者279 評価2 分岐1
192章. ウェアウルフ 読者465 評価0 分岐1
193章.接してはならない過去の世界読者228 評価2 分岐1
194章.日食は満月と太陽読者411 評価0 分岐1
195章.陰陽黄泉読者489 評価0 分岐1
196章.恐ろしい混血読者467 評価0 分岐1
197章.闘いの天才読者560 評価3 分岐1
198章.悪夢も愛には勝てません読者282 評価2 分岐1
199章.衂虫寄生襲来読者343 評価8 分岐1
200章.人の夢は悪夢に染まるのか?読者308 評価0 分岐1
201章.治まる混血読者581 評価0 分岐1
202章.衂虫の恐怖、人狼の弱点、夜空を駆け巡る読者371 評価0 分岐1
203章.最終決戦!!決めろ混血ゴッド読者525 評価0 分岐1
204章.サァ、決着だ読者370 評価0 分岐1
205章.拳、犬を拾う 新たな組織レジスタンス読者266 評価0 分岐1
206章.夢の反逆者達読者397 評価2 分岐1
207章.いざ、ヴェレスへ読者287 評価0 分岐1
208章.清的咒文倾注到日本読者538 評価2 分岐1
209章.罠 読者403 評価0 分岐1
210章.オオダチ・テイリ参戦読者532 評価0 分岐1
211章.記憶の果てに悩まされ読者223 評価0 分岐1
212章.闘志と本気を燃やせ 読者348 評価0 分岐1
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結城
17.10.06
254
2
1
____ヴェレス山、山頂



此処では、斬鉄と栞が、二人の悪夢の住人____オオダチとテイリと交戦中



石捜索を始めて、10分もしないでやってきた二人



余りに突然の事だった



特に、栞は苦戦を強いられている





「っ……ク…!」

「…反撃して来ないとは」




栞は反撃をしない


電子機器が無い此の空間、己の持つ能力、”リモコン”で『早送り』等を駆使しながら攻撃を行うテイリ



何故、反撃をしないのか







____反撃が、出来ないから




栞が『旋律の歌姫』と呼ばれるのは、あくまで能力での成果による話である



彼女自身、体術は得意としない




彼女の能力、”歌”は、音の波長を操ったり、歌__ならぬ曲、音を発生させて相手を錯乱させたり、能力を上手い具合に駆使して音速移動が出来たり、打撃等を与えるときに振動を一点に集中させたり、空気を振動させて広範囲攻撃を行うのだが


こんな開けた場所だと、その効果が薄くなる



音速移動も、体術が得意でなければ意味が無い




上には青々と、果てまで広がる大空





____……不味いなぁ……………____





だから、反撃が出来ないのである






「……貴女に反撃する意思は無いと見ました。然し私は貴女に攻撃をし続ける。




此れ等から求められる計算式、その解は、『貴女に勝ち目は無い』____ッ!!」

「………っむ、反撃する意思はあるわちゃんと!!」




むっ、とした顔で答える栞



反撃する意思が無いのではない



____今、考えているっての……!!___








然し眼前にはテイリがもう、居る




「ッ___ハァッ!!」

「ぅ…っ、ぐ…!!」





超至近距離での、蹴り、からの突き上げ





蹴りは至近距離からではないと出来ない、当り前である






栞の身体が宙を舞う



そして降下





ドッ……__




「あがっ…!!」




激しく地面に、身体が叩きつけられる






____あんな、いきなり近くに居られたら、ビビっちゃうよ、もう……………。









……………あれ……?





……………近く、に……?







……………そうか、至近距離だ。




……至近距離、即ち小さい空間でなら、波長も振動も、遠くまで広がらずに消えない。





……あー、もう!私バカだなぁ。





こんな典型的な事に気付かないなんて____




苦痛で歪む栞の顔


口元に入れてた力が緩み





「……ふ、……ふふ、ふ」




小さく、吐息混じりに笑いだす




「…………意外です、あんなにも高い場所から落ちて、笑っていられるなんて、……計算範囲外です。然し、貴女にもう戦えるまでの体力は残っていない。今の落下で最低でも10本程骨が砕けたと見ましたが」

「…じゅ、っぽん……骨、が、砕け、た、ね……ぇ………」




ゆら……と、立ち上がる栞




かぷっ、と小さく血を吐き出す





覚束無い足で、立ち上がる



口元に付いた血を、袖で拭う





「……た、にんの力を、借りるのって、カッコ悪い、かなぁ…?でも、うん……矢っ張り、今骨が砕けた………状態で戦うの、はきび、しい、なぁ。




でも、やっと打開策、を見つけ、た。だから、姐さん…………絶対聞こえてると思う、けど……絶対、分かってる、と思うけど……………





私、を治癒、して………!」




言葉を言い終えた直後、栞の足元に曙色の魔法陣が展開する





柔らかい光が栞を覆う




「ッ……!?」

____此れは……、計算外の事態が………?!___






誰も、その場に居ない治癒能力持ちの者に、治癒をしてと言うとは思わない



只、あの少女がイレギュラー過ぎるだけである




誰も、予想だにしなかった状況が、今起こっている






光に覆われた栞の身体は、段々と回復されて、砕けた骨も元に戻る




光から解き放たれた栞の姿は、体勢を低くして、再戦闘をする構えだ





「……さ、此処からが本番!!」




音速で走り出す










同時刻、オオダチと斬鉄





一度引き、刀を鞘に納め、直立不動のまま目を閉じる斬鉄


フゥ……____と、一つ深呼吸を行う






「…む?戦闘中に目を閉じて深呼吸とは、お主も良い度胸しちょるのぉ。




何を仕出かすかは分かっちゃもんじゃぁないが、好機と見た。討ち取ったりぃ!!」




大剣を持ち、一気に接近




そして振り下ろ_____






「____ッ___!」






目をカッと見開き、刀に手を遣り、引き抜く




その動作は、あまりにも早くて見えない





「……ッが!?」

____何が、起こっ……!?____




刹那の内にして、オオダチの腹部に傷が入る





瞬時に身を引く




「ッ……つ…つ…………何が、起こったっちゅぅねん………」




大剣を持ちながら腹を抱え、自分の腹部に目を通した後に斬鉄の方を見る





____其処には、誰も居ない








「遅い」





声がするのは背後から





気付いた時にはもう遅い


刀は既に振られている





「…ッ!」




咄嗟に斬撃を受け流す



が、流しが甘かった様だ




一つ、傷が入る



更に一つ、傷が入る





____なん………此奴は……____





斬鉄は、大男のオオダチとは違って、身体は当たり前だがオオダチより小さい


故に、彼よりも小回りが利く




そして、速い



オオダチは彼の顔を一瞬だけ認識できたが







____その目には、只相手を殺す







それ以外の情は無かった






情の欠片は微塵も無い、冷徹な目をしていた






傷は与えられ続ける一方






そして







「……『斬』!」





容赦無しの深い斬撃が、オオダチの身体に入る






「ッ、ガァッ!!!」






____彼は一度(ひとたび)刀を抜けば、それはそれは恐ろしい戦闘鬼と化す


















____ヴェレス山、洞窟内部



開けた洞窟に出る



あんな狭いところで巨大怪獣なんて、洞窟が崩れたら一溜りもない




「…ッ、よし、此処まで引きつけた……けど、大き過ぎ!」

「ッ…ぅ……」

「っあ、だ、大丈夫大丈夫!………私達なら、あれくらい倒せる。自信を持って!」

「う、うん………」




小さく返事をすると、抱えているリュックの口を開けて、多数の人形を出す




「……え」




小夏、少し唖然




からの、太腿についているポーチから何かを出す




暗器、苦無である



数は八



其れを一つ一つ、指の間々に挟む





「………………」

____………凄いやる気満々じゃないの…?____




別にそうではない


只、己の身を守るが為である




普通に言えば、戦闘は苦手な方(したくない、という意味で)





「ぼ、僕が先陣を…………。皆、行って……!《『苦無乱舞(Κουνέι Χορός – クネイ・ホロス)』》……!!!」





ククロの掛け声で、約20はある人形達が一斉に動き出す



そして、技宣言



苦無を投げ飛ばす



その苦無が、独りでに動き出し、更に加速




今度は腰に装備している四本の十字剣(ダガー)を、先程の苦無の様に投げ飛ばし、更に懐から二本の匕首(アイクチ)__鍔が無い短刀__を取り出し、両手に持つ




なんとまあ、暗器だらけである



計十四本





刹那、ククロが走り、ドラゴンに向かって走り出す






小夏、更に唖然





………って





「唖然してる場合じゃない私!……っフ………ゥ………。






………よし」




ドリームフォースを、奥底から解き放つ








人形の放つ特殊能力



放たれた苦無と十字剣





匕首を持った、アサシンと化したククロ




力を解放した小夏






「グォオオオオアアアアアアアアア!!!」




ドラゴンの咆哮



ドクロドラゴン____即ち、骨身のドラゴン




骨はとても頑丈である



そう易々と壊れない






____多大な衝撃を与えなければ






人形が水圧を与え、火を与え、振動を与え衝撃を与え……____





苦無が、十字剣が、キィンと甲高い音を上げながら少しずつ骨を削り____





ククロが、匕首で、攻撃を持ち前の反射神経と動体視力を生かして避け乍ら、切り刻み____




小夏が、ドリームフォースによって強化された身体で打撃を与えて____






骨身のドラゴンを崩していく




然し此のドラゴン、少し厄介な点がある





骨だけに、構成されて、組み立てられているだけに、壊しても、時間が経てば元に戻ってしまう



それに合わせて闘力3000万




「……ッ、ハ、ァッ!!」

____何よ此奴、全然倒れないじゃないの……!!____


「ッ、く、やぁっ…!!」

____ドクロドラゴン………お姉ちゃんが言ってた。





骨が組み立てられているだけだから、時間が経てば直ぐに戻っちゃう。




………………此の時、如何すれば良かったんだっけ____




斬り掛かり、避け、斬り掛かり、避け乍ら思想する







____『溶かせ、溶かして無くせば良い』






「………そうだ、溶かす、んだ…!え、と……一旦、引いて、ください…!!」

「え!?」

「僕に、考えが……」

「……分かった!!」




一度引く二人




「えと、リタ、来て…!!」



リタ、と名を呼ぶと、近付いてくる一体の人形



………………





「大きくない!?」




通称・イフリータ人形


イフリータ、とはイフリートの女版である



イフリートは、魔人、悪魔、精霊の一種であり、イスラム教では堕天使の立ち位置でもある巨人である




普段は縮小してリュックの中に入っている




「ハイ、ナンデショウ御主人様」



片言で話すイフリータ人形ことリタ




「リタ、って……硫酸の能力、持ってた、よね……?」

「エエ、御持チデス。アノドラゴン二、私ノ能力ヲ使ウノデスカ?」

「う、うん………」

「ワカリマシタ。然シ、此ノ侭デハ御主人様モ御連レノ方モ溶ケテシマイマス。………奴ヲ使ウノデスカ?私ノ気ハ余リ乗リマセンガ。


カト言ッテ、”フルオモアンチモン酸”ハ使用シマセンヨ」
(フルオモアンチモン酸は硫酸の一京倍の強度の酸で、何でも侵食してしまうほどの強酸なので危険、超危険)

「う、ん………溶けるのを防ぐには、其れしか無いから………リン、居るかな」




リン、其れもまた、人形の名である



リドワン人形____リドワンとはイスラム教の天国の番人とされる天使である



少女天使の人形で、彼女の持つ力と耐性は、原子と酸


耐性は完全にリタ耐性であり、力もまたリタ耐性な感じである。天使と堕天使、という仲である故か


原子___その能力は無類の可能性を秘めており、物事の総てを構想する強大な能力である


然し人形故、大きな力は使えない。精々、何かしら__何か物事を覆すような物以外とか__を作ったりできるだけである




と、遠くで戦っているリンが反応し、此方に寄って来る


因みに彼女のサイズは普通、小夏の膝下くらいの大きさである




「何でショー、御主人?話はチラリと聞きマシタが」



微妙に片言である



「え、と……リタが硫酸の能力でドクロドラゴンを溶かして………でも、僕達、まで被害が及ぶ、から………」

「ふムゥ?成ル程、承知しまシタ。ツマリ、奴の放つ能力かラ御主人達を守レバ良いのでスネ」




コクコクと頷くリン




「デハ、私ハ参リマス。御主人様、武器ト他ノ人形ノ回収ヲ」

「う、うん。……み、皆、集合…ッ!!」




と、ピタリと人形達が攻撃を止め、武器もまた動きが止まる


そしてわらわらと此方に寄って来る




「………人形、凄いね」



呆れたような、感心してるような、そんな感じで言う小夏












「……フゥ」




人形、のくせに一呼吸吐くリタ

目の前には巨大怪獣、ドクロドラゴン




「……ソウ言エバ、御主人様。ドノ程度溶カシ二ナレバ宜シイデショウカ?」

「うぇっ!……えっと、………」




____『溶かす、と言っても完全に溶かし切らなくていい。少しでも溶ければ、奴は再生不可になる。それに骨も脆くなっている。其処を、狙え』





…………………





「す、少し溶ければ……」

「………承知シマシタ。ソレデハ行キマス。リン、チャント守リナサイヨ」

「分かっテルヨ!っタク、《『アンノールガンニー・クリュスタッロス』》!!」



無機物の氷__即ち硝子である。其れを結界の様に、洞窟大広間を覆うように展開する



酸は、無機物を溶かせない





「デハ、溶ケナサイ。醜イ怪獣。《『スィミピクノメノ・シーコ・オクシィ』》!」





シュゥゥ、と何かがリタから放たれる



Συμπυκνωμένο θειικό οξύ____濃硫酸



それが気化している




周囲の岩は溶けず、その場に居るリタも能力の影響で溶けず、然しドラゴンだけが溶けていく





「………”スタマティステ”」




じゅわじゅわと、ドラゴンの身体が少し溶けかかっている中、そう言うと放出が止まる




「………此レデ、宜シイデスカ?」



くるりと、ククロ達が居る方を振り返る



「うん、あり、がとう…!」

「イエ。デハ、回収シマス。”アンナークティッシィ”」




今度は放った濃硫酸を、自らの体内に吸収する





____その場に危険物質は無くなった





「モウ、大丈夫デス。リン、解イテモ良イワヨ」

「ン、もうイイノ?じゃあ、”スタマティステ”、ット」




結界も無くなる




「奴ノ骨ハ溶ケテイマス。其レ二、朽チテキテイマス。今ガ好機デス」

「……うん、有難う…!………っえと、い、行きますッ………!!」



もう一度、匕首を両手に持ち、斬り掛かる




「ん、えと………リタちゃんにリンちゃんだっけ?有難う、此れで形勢逆転よ!!」

「御気ヲ付ケテ、行ッテラッシャイマセ」



ペコリと頭を下げ、見送る




小夏はドリームフォースの力を更に強める



そして、攻撃を与える



するとどうだろう




衝撃を与えただけで、あっさりと崩れるではないか






「ッ、フっ……!!」

____わっ、吃驚するくらい柔らかい……豆腐みたいに崩れる………____



強度は豆腐並





ボロ、ボロボロと壊れてゆくドクロドラゴン




「此れ、一気にやったら粉砕する、よね?」

「た、多分………」

「なら、ククロちゃん引いて!私がやる」

「っぇっ、あっ、はい………っ!」




後ろに下がるククロ




其れを見て、息を整える小夏





「豆腐なら、もう何も怖くない。崩れなさい!《『水霧・豪雨(フォグ・ダウンプーア)』》ッ!」




右手を上に掲げる



洞窟内に籠る湿気


其れ等が、目に見えるようになる




シュゥゥ……と集まり、もくもくと、霧__ならぬ雲が出来上がり




其処から、ポツリ、ポツリと雨が降る




其れは次第に強さを増す



そう、まるで豪雨




激しく、ドラゴンの身体に当たる




ザァ______





水を掛けた砂山の砂が、徐々に溶けて消えていく様に、ドラゴンが消えていく






……………………………………………






「やッ、タァ!!」




グッとガッツポーズをする小夏





「やったよ、ククロちゃん!!」

「……ぁ、…………!!」



ククロも底なしか、少し嬉しそうである








雨は次第に、止んでいく_________
















「ッ、ラ、ァッ!!」

「フンッ!!」





殴り掛かる


然し受け流される





粘液型から悪魔型に変異したズジョウは、今迄とは非にならないくらいに強い





「……ッチ」




奴は如何やらバクの次に強い様である




舌打ちをしながら後ろに下がる絃入




だが嘗ての、粘液型の名残があるのか、徐々に攻撃力が弱まる模様

またダメージが一切効かない、というのも少し残っている。他よりダメージを受けにくい、とだけになっているが









「ックソ、奴に全然攻撃が通らねえ!!」

「直ぐに受け流される……ッ」

「当たってもダメージあまり通ってない様だな……」

「だが、微妙に攻撃力が落ちてきてないか?」

____バテてる……?否、そうには見えない。




だが、時間が経つに連れて攻撃力が落ちると見た。




………ダメージはあまり入ってないようだが____




____長期戦に持ち込めばいい




勘付いた棘葉


全員に指示を出す




「皆!奴は時間が経つに連れて攻撃力が下がっている。



辛いと思うが、長期戦に持ち込む!!」

「経つに連れて攻撃力低下……?




………ハッ、随分痛い弱点だな」





鼻で笑う影裏


意見を呑む





「………チ、今頃勘付いたか。気付かれたのなら仕様が無い、早期に御前等を倒す。






どうせ御前等の攻撃は、当たらないんだからな!!」

「当たらねぇ?誰がンな事決めた。其の確信はねェだろ?」

「………………少しでも、当たる確率はある。ええ、あります!!」





一度引いて、少し動く




その配置は、ズジョウを中心に、囲んでいる




「………?」



周りをジッと見ながら、顔を顰める






「行け、影裏!」

「チッ、時間の先延ばしか。




今度は、拷問だけじゃねェ。見えない檻に包まれな。出ることは出来ねぇぜ、悪夢よォ!!



《『オスクロアルバ』》ッ____







______ッオラァッ!!!」






オスクロアルバ____ダークドーンの強化版である



拷問に檻が付与



逃げられはしない




消えゆく意識の最中





暁が見えることは、永久に無い______






「ッ、………!!」




奴は、恐らく此れでは倒れない



強力な技を浴びさせても尚、倒れないであろう




只の時間の先延ばし





時が経つに連れて攻撃力は下がる



そしてダメージを受けないという面



ダメージは、物理攻撃の方である











物理攻撃が与えられないのなら、精神攻撃をすればいい





そういう意味で、拷問







見えない檻で、彼はどのような苦痛を受けるのか____













「…………」



ピタリと手を止める




「……?如何した主人、石は未だ見つかってねェぞ?」

「………否、探す手間は省けた。もう見つけた様で」




スクッと立ち上がって、何処かへ向かう




「……………戻るのか、っと」




着いて行く婪




歩きながら、右手を蟀谷に付けるメア




「……クレル、冷、其方の状況は如何?_______






…………ハァ?モンスターと遭遇?……まあ良いや、討伐次第に、他の連中も連れて、頂上に来て。





………うん、もう石を探す必要はない。ククロと小夏が見つけたみたい」

「……………………」

____何故、通信機も無しに、クレルと冷と、会話をすることが出来るんだ?____




此の前やった、遠隔操作通信とはまた違う。あれは、力を飛ばして行うモノ



だが此れは、明らかに、如何見ても意思疎通






………………一体、何の関係性があるのか

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筆者:Kd  読者:258  評価:0  分岐:1

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Kd #0 - 17.10.06
すごく面白い☆
おおおお!!いい感じにできてます。

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