これまでのあらすじ
『病迷悪夢』
時烈の塔____
ギルドから北東に数十㎞先に聳え立つ、古代の塔
古代、と言っても見た目だけの話だが、かなり古い円柱の建築物(ピサの斜塔の直径が大きくて、傾いてないのを思い浮かべてください)。ひび割れがよく見つかる
何層にも渡る巨塔。塔の頂は、雲の真下迄到達する
壁に沿う様に設置された階段で一つ一つ登って行くのである。昇降機なんて無い
実は二種類の最上階への行き方があるのだが、もう一つはまた後で
其処の最上階には、不思議な石が注連縄に締められ、祀られている
____時間を行き来出来る石
通称、三世石(ミツヨイシ)
三世とは、仏教用語で前世、現世、来世を意味する
だが、此の石はそうではなく、只単に、今と過去と未来を行き来出来るだけである
然し、注意すべき点が一つ
過去に行った場合、決して人と干渉してはならない
些細な事で、歴史は改変してしまう
些細な歴史の動きで、誰かが生き、誰かが死ぬ運命に変わる
此れ程迄に恐ろしい事はあるのだろうか
歴史は改変してはならない
若し過去に飛んだ場合は、霊体と同じ様に。否、存在も其の場に無い様にしなくてはならない____
________
「____………と、祀られている三世石と、些細な事での歴史の動きと其の恐ろしさについて話したが………理解出来たか?」
「何と無く理解出来た」
「………………」
がたん、ごとん
大きな馬車に揺られながら、時烈の塔へ向かう十二騎士御一行
メアがもう一度、徠亜の説明が少し大雑把だったのでと詳しく説明した
と言っても、内部構図とか時間行き来出来る石とかその辺だが
「……兎に角、若し過去に行った場合は、存在此処に在らず。全てを消した状態でなくてはいけない」
「全てを消すって、如何やるの?」
悠が首を傾げて問う
其れにニコリと笑うメア
「其処で、此れをやる。一寸全員、私を見てて。と、一つ宣告。私、其の場から動かないから」
注目、と全員の視線を集める
左手に死霊秘宝を出す
目を閉じて、詠唱する
「"我が姿を見るものは誰として皆無、足音は無音なり"____《『死霊秘宝 - 黒魔術・暗影黒歩(シャドウヴェール)』》」
嘗て名無しの吸血鬼に掛けた魔術である
パッ、とメアの姿が消える
気配も存在も完全に断ち切り、姿も見えず、足音も、と言うより音も何もかもが消える
そんな黒魔術である
「はっ?!え、ちょ、何処行った?」
「え、否、動かないって言ってたけど………」
隣に座って居る悠が、メアの居た位置にふよふよと、宙で手を動かす
が、触れているのは空気のみ
霊体になっているのか?
「帝斗、烈華、何か視えない?人型とか」
「ん………否、何も無い」
「僕にも何も…………霊体になっても無い、完全に存在が断ち切られてます」
霊の視える二人が目を凝らして視るが、矢張り何も無い
「…変なの〜」
と、悠が其の場から手を引いた直後____
「まあ、こんなものよ」
「「「わぁっ!!?」」」
突然姿を現わす
「な、何で今……姿現したの……?!」
「だって悠がふよふよ手を動かしてる所が丁度私の胸の位置だったから」
「え。
…………でも今、ぺったんこじゃん」
※サラシでギチギチに締めているからです
「……兎に角、触られながら存在出すのが嫌なの。然も、身体摺り抜けてるし」
「怖ッ!」
気配も消す
熱も消す
存在も消す
己の全てを消し去る
其れが、此の魔術の効果である
此れさえ有れば、本当に誰にも気付かれないし、力を解かない限り、誰にも干渉は出来ないのである
勿論心霊写真で写る、なんて事も無い
幾ら強かろうが、此れを見破れる者は居ない
「とまあ、過去に行った場合は此れを全員に掛ける。解こうと思うなよ?幾ら難易度Dのヤツだからって、解けるモノじゃ無いし、抑も難易度Dクラスのを態々最高クラスに迄上げたんだからな」
「まあ、其れさえ有れば怖いモノ無しだな。……っと、長話してる間にもう着くぞ、時烈の塔へ」
馬車の窓を開けて、外を見る徠亜
其れに続いて、他の人達も外を見る
広大な森に有る一本道の先
近付けば近付く程、其の大きさが身に染みる
天を見上げれば、頂がギリギリ見えるか見えないか、そんな大きな塔
____時烈の塔、到着
*
*
*
同時刻、盗賊狩りをして居た白夜と朧、そして其れを見物して居たトワイライトが時烈の塔へ到着する
時烈の塔は実は二つ入り口があり、また先程も述べた通り、二種類の最上階への行き方がある
一つは前述の、壁に沿う様にして設置された階段を登る事
もう一つは、層ごとにバラバラに配置されている階段を登る事
時烈の塔の内部は迷路状になっており、正式な経路を通って行けば階段に辿り着く
内部は多少、壁沿いの階段よりかは距離が短縮出来るのだが、迷路状なので見つけるのに手間が掛かる
一層の事壊そうぜ、なんて思考は辞めといた方がいい
道を区切る壁は、天井に迄届いている
崩したら、上の層を支える役割も果たす壁が無くなる事により、上の層が崩れ落ちてくるからである
落ちたら落ちたで天罰を喰らう
まあ迷路は、スリルを味わえるからいいだろう
三人が選んだのは…………____
「内部から行くか?」
「……内部からだな」
「………内部からか」
トワイライトはあまり乗り気では無い様子
安全性よりスリルを選んだ彼等であった
*
*
*
「……うわぁ………でっか」
「本当だ………首が痛いです」
「今にも崩れそうな気がする………宛ら傾いてないピサの斜塔だな」
「おーいお前ら、其処でボーッと突っ立ってないで、置いてくぞ」
外から塔を眺めている拳、誠、槍児
徠亜に注意される
入り口入って直ぐ左手、壁沿いの階段がある
此れをぐるぐると登って行けば、最上階へ辿り着く
然し道のりが長い
何にせよ、頂が雲の真下だから
*
*
「ッ、はぁ…………な、長い………足疲れた」
「ガタガタする、足が………」
殆どが疲れ切っている
現在、位置的には半分
普通に立っているのは、徠亜、メア、拳、影裏、棘葉の五人だけである
「………だらしないなぁ、あの九天山の蔦登るよりかは楽だぞ?」
「否、まあ、そうなんだけどさ…………あれって休んだら死ぬじゃん………?」
「………まあ、そうだね」
気を緩めて手を離したら、一気に地面に激突して御臨終
然し此れは階段。休んでも大丈夫
気の緩みであろう
「………でも、急ぐよ。…………近くで、生物の気配がする。人型だ。
…………只でさえ、此処に訪れる奴なんて居ないのに…………。またバクの手下とか、其の辺かね」
「たくよぉ………何で選りに選って同じタイミングで同じ所にあるのを狙うんかね奴等は」
「大体お前から場所言うんだろうが」
グチグチと言葉を漏らす徠亜に突っ込むメア
「兎に角、後半分だよ。……………本気で無理って奴は、手を上げろ。上げた腕を耳に付けて」
14-5………九人の内、五人がゆっくりとだが、ぴしっと手を上げる
誠、小姫、小夏、銃菜、刀子…………____
「悉く女ばかりだな。誠は年相応、小姫と銃菜は病弱だからまあ分かるんだが………………まあ、極力無理をしないで。多分、戦闘控えそうだし。………吸血鬼(ヴァンパイア)」
「何故雑用に一々俺を呼んでくるのかなァ主人?」
「……そして、何故私達も」
「呼ばれるんですの?」
何時もの男吸血鬼と、今まで出て来た事の無い、顔の似た美人吸血鬼が二人が召喚される
名はあるが、告げない吸血鬼姉妹
「何故って………だって人間に友好的だから」
「それだけ………?で、何をしろと言うんです?」
「彼女等抱えてくれれば有難い」
「矢張り其れかよ。………雑いなぁ、よッと」
「全くですわ、よいしょッと」
「ほいさ〜、っと」
性別云々からだろうか
男吸血鬼は誠を抱え、吸血鬼姉妹は其々二人ずつ、両腕に女性陣等を抱える
片手で姫抱きしてるような感じである
吸血鬼、強し。軽々と抱える
「却説、上行くか」
引き続き、最上階を目指す
ギルドから北東に数十㎞先に聳え立つ、古代の塔
古代、と言っても見た目だけの話だが、かなり古い円柱の建築物(ピサの斜塔の直径が大きくて、傾いてないのを思い浮かべてください)。ひび割れがよく見つかる
何層にも渡る巨塔。塔の頂は、雲の真下迄到達する
壁に沿う様に設置された階段で一つ一つ登って行くのである。昇降機なんて無い
実は二種類の最上階への行き方があるのだが、もう一つはまた後で
其処の最上階には、不思議な石が注連縄に締められ、祀られている
____時間を行き来出来る石
通称、三世石(ミツヨイシ)
三世とは、仏教用語で前世、現世、来世を意味する
だが、此の石はそうではなく、只単に、今と過去と未来を行き来出来るだけである
然し、注意すべき点が一つ
過去に行った場合、決して人と干渉してはならない
些細な事で、歴史は改変してしまう
些細な歴史の動きで、誰かが生き、誰かが死ぬ運命に変わる
此れ程迄に恐ろしい事はあるのだろうか
歴史は改変してはならない
若し過去に飛んだ場合は、霊体と同じ様に。否、存在も其の場に無い様にしなくてはならない____
________
「____………と、祀られている三世石と、些細な事での歴史の動きと其の恐ろしさについて話したが………理解出来たか?」
「何と無く理解出来た」
「………………」
がたん、ごとん
大きな馬車に揺られながら、時烈の塔へ向かう十二騎士御一行
メアがもう一度、徠亜の説明が少し大雑把だったのでと詳しく説明した
と言っても、内部構図とか時間行き来出来る石とかその辺だが
「……兎に角、若し過去に行った場合は、存在此処に在らず。全てを消した状態でなくてはいけない」
「全てを消すって、如何やるの?」
悠が首を傾げて問う
其れにニコリと笑うメア
「其処で、此れをやる。一寸全員、私を見てて。と、一つ宣告。私、其の場から動かないから」
注目、と全員の視線を集める
左手に死霊秘宝を出す
目を閉じて、詠唱する
「"我が姿を見るものは誰として皆無、足音は無音なり"____《『死霊秘宝 - 黒魔術・暗影黒歩(シャドウヴェール)』》」
嘗て名無しの吸血鬼に掛けた魔術である
パッ、とメアの姿が消える
気配も存在も完全に断ち切り、姿も見えず、足音も、と言うより音も何もかもが消える
そんな黒魔術である
「はっ?!え、ちょ、何処行った?」
「え、否、動かないって言ってたけど………」
隣に座って居る悠が、メアの居た位置にふよふよと、宙で手を動かす
が、触れているのは空気のみ
霊体になっているのか?
「帝斗、烈華、何か視えない?人型とか」
「ん………否、何も無い」
「僕にも何も…………霊体になっても無い、完全に存在が断ち切られてます」
霊の視える二人が目を凝らして視るが、矢張り何も無い
「…変なの〜」
と、悠が其の場から手を引いた直後____
「まあ、こんなものよ」
「「「わぁっ!!?」」」
突然姿を現わす
「な、何で今……姿現したの……?!」
「だって悠がふよふよ手を動かしてる所が丁度私の胸の位置だったから」
「え。
…………でも今、ぺったんこじゃん」
※サラシでギチギチに締めているからです
「……兎に角、触られながら存在出すのが嫌なの。然も、身体摺り抜けてるし」
「怖ッ!」
気配も消す
熱も消す
存在も消す
己の全てを消し去る
其れが、此の魔術の効果である
此れさえ有れば、本当に誰にも気付かれないし、力を解かない限り、誰にも干渉は出来ないのである
勿論心霊写真で写る、なんて事も無い
幾ら強かろうが、此れを見破れる者は居ない
「とまあ、過去に行った場合は此れを全員に掛ける。解こうと思うなよ?幾ら難易度Dのヤツだからって、解けるモノじゃ無いし、抑も難易度Dクラスのを態々最高クラスに迄上げたんだからな」
「まあ、其れさえ有れば怖いモノ無しだな。……っと、長話してる間にもう着くぞ、時烈の塔へ」
馬車の窓を開けて、外を見る徠亜
其れに続いて、他の人達も外を見る
広大な森に有る一本道の先
近付けば近付く程、其の大きさが身に染みる
天を見上げれば、頂がギリギリ見えるか見えないか、そんな大きな塔
____時烈の塔、到着
*
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同時刻、盗賊狩りをして居た白夜と朧、そして其れを見物して居たトワイライトが時烈の塔へ到着する
時烈の塔は実は二つ入り口があり、また先程も述べた通り、二種類の最上階への行き方がある
一つは前述の、壁に沿う様にして設置された階段を登る事
もう一つは、層ごとにバラバラに配置されている階段を登る事
時烈の塔の内部は迷路状になっており、正式な経路を通って行けば階段に辿り着く
内部は多少、壁沿いの階段よりかは距離が短縮出来るのだが、迷路状なので見つけるのに手間が掛かる
一層の事壊そうぜ、なんて思考は辞めといた方がいい
道を区切る壁は、天井に迄届いている
崩したら、上の層を支える役割も果たす壁が無くなる事により、上の層が崩れ落ちてくるからである
落ちたら落ちたで天罰を喰らう
まあ迷路は、スリルを味わえるからいいだろう
三人が選んだのは…………____
「内部から行くか?」
「……内部からだな」
「………内部からか」
トワイライトはあまり乗り気では無い様子
安全性よりスリルを選んだ彼等であった
*
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「……うわぁ………でっか」
「本当だ………首が痛いです」
「今にも崩れそうな気がする………宛ら傾いてないピサの斜塔だな」
「おーいお前ら、其処でボーッと突っ立ってないで、置いてくぞ」
外から塔を眺めている拳、誠、槍児
徠亜に注意される
入り口入って直ぐ左手、壁沿いの階段がある
此れをぐるぐると登って行けば、最上階へ辿り着く
然し道のりが長い
何にせよ、頂が雲の真下だから
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「ッ、はぁ…………な、長い………足疲れた」
「ガタガタする、足が………」
殆どが疲れ切っている
現在、位置的には半分
普通に立っているのは、徠亜、メア、拳、影裏、棘葉の五人だけである
「………だらしないなぁ、あの九天山の蔦登るよりかは楽だぞ?」
「否、まあ、そうなんだけどさ…………あれって休んだら死ぬじゃん………?」
「………まあ、そうだね」
気を緩めて手を離したら、一気に地面に激突して御臨終
然し此れは階段。休んでも大丈夫
気の緩みであろう
「………でも、急ぐよ。…………近くで、生物の気配がする。人型だ。
…………只でさえ、此処に訪れる奴なんて居ないのに…………。またバクの手下とか、其の辺かね」
「たくよぉ………何で選りに選って同じタイミングで同じ所にあるのを狙うんかね奴等は」
「大体お前から場所言うんだろうが」
グチグチと言葉を漏らす徠亜に突っ込むメア
「兎に角、後半分だよ。……………本気で無理って奴は、手を上げろ。上げた腕を耳に付けて」
14-5………九人の内、五人がゆっくりとだが、ぴしっと手を上げる
誠、小姫、小夏、銃菜、刀子…………____
「悉く女ばかりだな。誠は年相応、小姫と銃菜は病弱だからまあ分かるんだが………………まあ、極力無理をしないで。多分、戦闘控えそうだし。………吸血鬼(ヴァンパイア)」
「何故雑用に一々俺を呼んでくるのかなァ主人?」
「……そして、何故私達も」
「呼ばれるんですの?」
何時もの男吸血鬼と、今まで出て来た事の無い、顔の似た美人吸血鬼が二人が召喚される
名はあるが、告げない吸血鬼姉妹
「何故って………だって人間に友好的だから」
「それだけ………?で、何をしろと言うんです?」
「彼女等抱えてくれれば有難い」
「矢張り其れかよ。………雑いなぁ、よッと」
「全くですわ、よいしょッと」
「ほいさ〜、っと」
性別云々からだろうか
男吸血鬼は誠を抱え、吸血鬼姉妹は其々二人ずつ、両腕に女性陣等を抱える
片手で姫抱きしてるような感じである
吸血鬼、強し。軽々と抱える
「却説、上行くか」
引き続き、最上階を目指す
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