関ヶ原〈上〉 (新潮文庫) の感想
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参照データ
タイトル | 関ヶ原〈上〉 (新潮文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 司馬 遼太郎 |
販売元 | 新潮社 |
JANコード | 9784101152127 |
カテゴリ | ジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 |
購入者の感想
学生時代から6回繰り返して読んだ。本書を読んで三成のファンになる人は多いようだが、
わたしは誰のファンにもならなかった。それよりこの戦いにどう対応したかで、滅んだ一族が
あり、明治維新そして現代まで生き延びた一族がいる。まさに歴史の流れを決めた戦いで、
何度読んでも壮大な歴史のロマンに打たれるからである。
「九州の余った米が大阪に運ばれ、それを東北の武士が買っていく」というように、経済が日本
全国規模で動き出すのは、秀吉の天下統一後のことである。それ以前は、地域社会の中で動いて
いたにすぎなかった。これが実現したのは秀吉の功績だ。世の中が一度この段階を経験すれば、
もう二度と逆戻りはしないだろう。
しかし秀吉は晩年に無用な朝鮮征伐を起こし、豊臣家の基盤を自ら破壊してしまった。
幼い秀頼では天下統一を維持できず、戦国の世に逆戻りする危険もあった。それなら、天下統一
を維持するにふさわしい人物が表舞台に出てくるしかあるまい。作者が描こうとした当時の世間
の空気は、こういうことであったのだろう。
三成は時代の流れに逆らい、豊臣家を存続させようとした。そこにすべての無理があったのでは
ないだろうか。しかし作者は黒田如水にこう言わせている。「三成のような寵臣までもが、
自己の保身を考えて家康のもとに走り、媚を売ったら、世の姿はくずれ、人はけじめを失う。
その点から言えば、あの男は十分に成功したのだ。」そこを書いてくれただけでも、司馬遼太郎
は歴史を読み取る天才の名にふさわしい。
わたしは誰のファンにもならなかった。それよりこの戦いにどう対応したかで、滅んだ一族が
あり、明治維新そして現代まで生き延びた一族がいる。まさに歴史の流れを決めた戦いで、
何度読んでも壮大な歴史のロマンに打たれるからである。
「九州の余った米が大阪に運ばれ、それを東北の武士が買っていく」というように、経済が日本
全国規模で動き出すのは、秀吉の天下統一後のことである。それ以前は、地域社会の中で動いて
いたにすぎなかった。これが実現したのは秀吉の功績だ。世の中が一度この段階を経験すれば、
もう二度と逆戻りはしないだろう。
しかし秀吉は晩年に無用な朝鮮征伐を起こし、豊臣家の基盤を自ら破壊してしまった。
幼い秀頼では天下統一を維持できず、戦国の世に逆戻りする危険もあった。それなら、天下統一
を維持するにふさわしい人物が表舞台に出てくるしかあるまい。作者が描こうとした当時の世間
の空気は、こういうことであったのだろう。
三成は時代の流れに逆らい、豊臣家を存続させようとした。そこにすべての無理があったのでは
ないだろうか。しかし作者は黒田如水にこう言わせている。「三成のような寵臣までもが、
自己の保身を考えて家康のもとに走り、媚を売ったら、世の姿はくずれ、人はけじめを失う。
その点から言えば、あの男は十分に成功したのだ。」そこを書いてくれただけでも、司馬遼太郎
は歴史を読み取る天才の名にふさわしい。