土漠の花 の感想

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参照データ

タイトル土漠の花
発売日販売日未定
製作者月村 了衛
販売元幻冬舎
JANコード9784344026308
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学

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購入者の感想

ソマリア付近で遭難したヘリの捜索救助に派遣された陸上自衛隊が、ソマリアの民族間紛争に巻き込まれ命を賭けて立ち向かう物語。

おもしろかった。自衛隊として銃や格闘の訓練はしているが、あくまでも訓練であり実践経験はない。それが突然、命の危機に扮して、応戦しなければ殺害される状況は緊迫感があって物語の序盤から一気に引き込まれた。

特に、廃墟の街での死闘は、ハムシンという砂塵嵐を伴った高温風の襲来や、少人数で大軍隊を前にいかに闘うのか、手に汗握る展開だった。

自衛隊員内の確執や、守るべき家族や仲間など、それぞれの人間関係や心理描写も丁寧に描かれていて読後感もよかった。著者の作品は初めて読んだが、今後も注目したい。

ジブチとソマリアの国境近くの砂漠で、12人の自衛隊員と1人の現地人が、武装した者達に突如襲撃される。それも巻頭において致命的な打撃を被る。
どうやって生き延びればよいのだ。必殺の秘密兵器も、超人的な能力も、巨大組織の後ろ盾も、何も設定されていない。武装解除された、現実的な姿の人間達がいるだけだ。
舞台設定の仕掛けを、意図的に削ぎ落としたのだと思った。著者の構成力だけで惹きつけ、読ませるのだ。

人物達の中に個人史と軋轢と疑惑が隠れており、対人関係の力学が作動し、小さな集団の内側からも入り組んだ物語が立ち上がってくる。
アフリカの地で大事な人を失い、初めてアフリカの人達の痛みを共有する。二章の結末で(いうなれば)「生まれ直す」友永が凛々しい。
三章で、失った誇りを取り返すために自ら行動をはじめる津久田が、かっこいい。
不条理に立ち向かい、生きる途を求めて戦い、自分を取り戻す。そのプロセスは極めて具体的な事象を介して、鮮明に語られている。

文にうねりとリズム感のある推進力を感じる。舞台設定の仕掛けを意図的に削ぎ落としていると思われるが、それだけに、 著者の筆力の特質が現れているのだと感じた。
戦闘の場面の上手さは健在だ。読む者を息もつかせずぐいぐい引っ張っていく。中身のぎっしり詰まった満腹感も健在だ。
加えて、この作品では、読後感が爽やかだ。
これは会心作に違いない。

読み始めたら、止められない、久々の一気読み冒険大作。
ひとり々のキャラも立っていて、それぞれの見せ場も十分。
特に最初はイヤな奴かと思われた「彼」には泣けます。
男児たるもの、まずは読むべし!

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