チャヴ 弱者を敵視する社会 の感想

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参照データ

タイトルチャヴ 弱者を敵視する社会
発売日2017-07-20
製作者オーウェン・ジョーンズ
販売元海と月社
JANコード9784903212609
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会一般

購入者の感想

本書は、イギリスの「ガーディアン」紙などで活躍する著者が2012年に刊行したもの。ただ、2016年版に付された「ふたたび、親愛なるみなさんへ」もおさめられている。書名にもなっている「チャヴ」は、イギリスでは“労働者階級全般”を意味しているが、特権階級・中流階級及び保守的なメディアでは、差別的な意味を込めて使っていることが多いようだ。
著者の名前はブレイディみかこ氏のコラムなどで目にしていたが、まとまったものを読むのは初めて。まさに「歯に衣着せぬ」と言うべき論調で、「弱者を敵視する社会」となってしまった現代のイギリスを批判している。

印象に残るのは、2章「「上から」の階級闘争」。イギリスの保守党の実態を様々に明らかにしながら、保守党がごく一部の特権階級の利益のために働いているにも関わらず、「必要最小限のほかの人々に必要最小限のものを与えること」(本文中では「必要最小限」に傍点が付されている)で、特権階級に属さない人々の多くから支持をとり続けていること。労働者階級などが「階級闘争」を放棄する一方で、特権階級は密かに「階級闘争」を維持していることを指摘している。また、現在の「労働者階級」の分断、さらにそれへの“敵視”は、サッチャーが首相だった1980年代に始まっているという部分にも共感できる。

ほかにも様々なケースを挙げながら、現代のイギリスが抱える様々な側面を抉り出している。そして、2012年版に付された「親愛なるみなさんへ」の345ページにも書かれているように、原題の副題が「白人労働者階級への敵視」ではなく「労働者階級への敵視」であることも重要だろう。「中流階級」に、労働者階級を敵視させる巧みなやり方は、イギリスがかって植民地で行ってきた人種・民族などを利用した分断政策を思い起こさせる。

本書にあることは、イギリスだけの問題ではなく、日本の問題でもある。
「中流階級」とおだてられ、「必要最小限のもの」だけを有難く受けとり、“弱者を敵視”することを“是”とする立場を、私は選びたいとは思わない。

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