ランドスケープと夏の定理 -Sogen SF Short Story Prize Edition- (創元SF短編賞受賞作) の感想

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タイトルランドスケープと夏の定理 -Sogen SF Short Story Prize Edition- (創元SF短編賞受賞作)
発売日2014-08-11
製作者高島 雄哉
販売元東京創元社
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購入者の感想

60年代生まれの私が、小学校高学年から中学生にかけて、読書を趣味とするようなことになった時、好きなジャンルは、「推理」と「SF」でした。
でも、いつしか、SFから遠のいていってしまったのが、現実。

もちろん、私が読まなかった間も、SF小説は書かれ、読まれていたのでしょうが、特に日本に限っては、SFに元気がなかったような気がします。
それが最近、日本のSF小説を原作としたハリウッド映画が登場したりして、何となくSF小説に再注目するようになりました。

そこで、読んでみたのが、本作品。
題名からして、いわゆる「ハードSF」な感じで、文科系人間の私にとっては、ちょっと冒険でしたが、「第5回創元SF短編賞受賞作」と、「短編」なら、なんとか読みこなせるであろうし、何しろ、選考委員の瀬名秀明による選評、「次の50年へと受け渡す傑作」という謳い文句にも惹かれてしまいました。

結果は、なかなか楽しめる作品になっていたと感じています。
「一般自然言語は存在するか?」と「宇宙の向こう側はどうなっているのか?」という二つのテーマ(ここも、瀬名秀明の選評から言葉を借りています)も、どこまでが実際の理論で、どこからがフィクションなのか、が分からない分、「小説」として面白味を感じました。

また、大好きなミステリの観点でみると、当初から登場する説明のないある人物の名前、これが不思議な伏線となっていて、その正体が分かるあたりから、物語展開に興味が深く湧いてきて、後半は読むスピードが速まりました。
こんなレベルの小説が登場するようになっていたことに、驚くとともに、嬉しくもあります。

【蛇足】
今回、キンドル本で読んだ本作品ですが、こうした「短編」の新人賞作品って、これまでだと、いくつかの短編を書き溜めて、初めて一冊の本として、売り出されることがほとんどだったと思います。
電子書籍というと、大長編もかさばらない、が売りですが、こうした賞を取りながら、紙の本ではなかなか発行できなかった作品を、短編単位で(もちろん低価格で)、市場に出せるというのも、大きな特徴ではないかと感じています。

ツンデレ姉(マッドサイエンティスト)とお兄ちゃんラブな妹(データ)が織りなすハードフルSF。

と若干沸騰した感想はさておき、本作はランドスケープと、"全ての異なる知性の会話を成立させる完全辞書が存在することを示した定理"である知性定理を掛け合わせたハード宇宙SF。
ランドスケープとはサスキンドの提唱する概念で、この宇宙は小宇宙の膨大な連なり(メガバース)の一つに過ぎず、別の宇宙では私たちの知る物理法則とは全く異なる物理法則が成立するという考え方。

最新の物理学用語が頻出する辺りはいかにもだが、物語自体はシンプルで読者が置き去りにされることはない。
事実、文系である私もセンテンスに込められた意味をどこまで理解出来たかはともかく、描き出される壮大なビジョンにわくわくしながらページをめくり続けた。
この目眩にも似た興奮がSFの醍醐味だろう。

惜しい点は知性定理というアイデアが一つの想像を提示するのに終わってしまっていること。
これまでの受賞作の傾向から、この作品も連作化されると考えられる。
このアイデアを更に活用した連作短篇集の登場を待ちたい。

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