「無罪」を見抜く――裁判官・木谷明の生き方 の感想

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タイトル「無罪」を見抜く――裁判官・木谷明の生き方
発売日販売日未定
製作者木谷 明
販売元岩波書店
JANコード9784000022293
カテゴリ社会・政治 » 法律 » 暮らしの法律 » 法律入門

購入者の感想

 週刊モーニング(講談社)誌上に掲載されている「イチケイのカラス」浅見理都 という裁判官を主人公としたマンガがある。刑事裁判に関わる裁判官の描写にとても現実感があり、機会があってこのモデルと目された人は?と尋ねたところ著者を推された。そこで著者による「刑事裁判のいのち」法律文化社を読み、続いて本書を読んだ。前掲書により「冤罪の可能性がある以上、死刑は不可」など、筆者の明確な問題提起に感服したが、本書を読んでなぜ筆者がそのような問題意識を獲得したのかがよくわかった。確かに本書で語られたような事柄が背景にあればそうなるだろうなあ、そのような理念的な話に加えて本、書では著者が無罪判決を出した際に、検察官などが納得できるための具体的な配慮の詳細が具体的に語られている。筆者はただスタンドプレイ的に自らの判断を押し付けるのではなく、徹頭徹尾、被告人の正当な法的利益を追求したということが、実務的なエピソードからよく理解できる。
 それにしても本書の面白さは、筆者の裁判官としての生活の様子が具体的に語れれているところにある。裁判官という職業に全く縁がなかった読者でも、裁判官社会の様子が手に取るようにわかって、「こういう世界もあったのか。」と視野が広がる快感を得られるだろう。

1937年生まれの元裁判官・木谷明(現在は弁護士)の,生い立ちから現在までを,本人へのインタビューで振り返った本。自身が関与した裁判の内情などもあけすけに語られている。

本のタイトルにも示されている,裁判官時代に出した多くの無罪判決の裏話のほかにも,最高裁調査官として関わった憲法裁判についての証言も面白い。「四畳半襖の下張」事件,『月刊ペン』事件,エンタープライズ寄港阻止佐世保闘争事件などである。理論派として名高い香城敏麿について,「みんなが分からない理屈を言うのだから、本当は頭が悪いんじゃないかという説もあります(笑)」(p.189)と書いてあるのには笑ってしまった。札幌に赴任していたときに遭遇した平賀書簡問題についても語られている。

こういった裁判所・裁判官の内輪の話が出てくることは余りないので,憶測から的外れな論評がなされているのを時折目にすることがある。木谷先生も定年前の依願退官だったため,あれこれ勘ぐられたようだが,本書では健康上の理由だったとはっきり書かれている(p.344)。いずれにせよ,まえがきにも書かれているように,時間が経ったのち,あのときの裁判はこんなふうに決まったんだと明かされることは,司法に対する国民の信頼を得るためにも必要であると思われる。こういった本はどんどん世に出すべきだろう。

もっともその前に,後世に誇れるような判決を書ける裁判官がもっと出てこないとね。

「30件以上の無罪判決」を書いた裁判官、この広告文を見てその日に求めました。その日は午前3時まで集中して読み、半分ほど読めました。私にとって、それくらい面白かったということです。加えて、インタビューという形なのでさらに読みやすかったということもあります。

30件に及ぶ無罪判決はすべて確定したといいます。検察が組織をあげて反論しようと思った筈ですが、それが出来なかった。結果として木谷裁判官の審理の方法と結論が、正しかったということです。木谷氏は、記録をよく読み被告の言い分をじっくり聞くということに尽きると何度も語っています。かつては被告人であった者から後になって「感謝」されたエピソードがいくつも出てきます。

裁判所、裁判官は「法」という建前の世界で結論を出すべきであるのに、実際は周辺の事情を考慮して法的正義に反する結論を出すことがよくあるということなのか・・

私は、この書を通読するまでは、多数の刑事裁判においてここまで有るべき姿から外れているとは思っていませんでした。もっとも、政治がらみの事件では裁判がいろんな事情で結論が歪むということは知識としてはありました。
この書は、政府や自治体、巨大な企業など、有るべき姿と実態の乖離、これを考えていくさいの想像力の源になると感じました。現実は普通の想像をはるかに越えているのだと思えてきました。

その他、裁判官の勤務評定や人事異動のことも興味を引くと同時に、レビュアーが関心をもっていた平賀書簡事件や白鳥事件、過去からごく最近の公務員の労働事件がらみの判決のことについて語っておれるのも最後まで興味をもって読めた理由です。

最高裁における裁判官と調査官の関係も非常にリアルに語られていて実態を知るという意味でとても勉強になりました。

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