日本の歴史〈20〉明治維新 (中公文庫) の感想

308 人が閲覧しました
アマゾンで購入する

参照データ

タイトル日本の歴史〈20〉明治維新 (中公文庫)
発売日販売日未定
製作者井上 清
販売元中央公論新社
JANコード9784122046740
カテゴリ歴史・地理 » 日本史 » 一般 » 日本史一般

購入者の感想

入院中、しばらくぶりに日本史関係を読んだ。このシリーズは元々1967年頃の出版で一昔前のものだが、近年とは視点が異なるところが多く、それが面白かった。

例えば、江戸開城後の東北系の反乱に対しても、遠慮なく描写している点だ。なお、新政府立ち上げ直後の、これも活発だった農民一揆の動きもちゃんと伝えてくれる。ただし、大地主は、小作とはまったく異なり、新政府にある意味活用された様子がわかる。実際には小作達の一揆は組織化されない騒乱なのだ。。

一方、元大名以外の士族達の俸禄は無くなり、仕事にあぶれた連中の反乱は西郷らの征韓論などの国際情勢を無視した(または無知な)動きとなったり、それも否定された後の新日本政府への大規模反乱となっていくのだが、そこらあたりを遠慮なく描いているのは秀逸だ。

よく見る歴史もの出版物は、どれかに肩入れしたり、偏った出版物が多いと感じるなかで、この本の視点の広さが面白かった。(左寄りだと分かった上で)このシリーズを今からもう少し読んで見ようという気になった。

井上清による明治維新史であるが、時代の隔世を感じざるおえない。

王政復古から五箇条の御誓文にかけて、人民主体から薩長独裁制を述べているが五箇条の御誓文の最初に書かれている「広く会議を起こし」は、現在に於いても先見性を持っている。ここは井上の人民史観(毛沢東主義)が鼻に付きすぎるきらいがある。赤報隊の解釈についても、現在の解釈とは隔たりがあるのも仕方が無いであろう。

井上のイデオロギーはたしかに問題が無いわけではないが、主筆当時のマルクス史観全盛という時代背景を考えると無理はないかもしれない。しかし、現在では重要視されている庶民からの視点は重要である。只、有司専制がなぜ必要であったのか?又、急激な改革を嫌った故の「五榜の掲示」の視点はどうであろうか。又、戊辰戦争に於ける人民の動向について、人民革命とする視点はいただけない。但し、現在の情緒的な佐幕贔屓の作家が隠そうとした奥羽や北越地域の一揆(長岡の郷土史家は、そのことに触れようとしない)など、領民と領主の関係に一考を示唆したのは外せない。

イデオロギー的に問題を残した本ではあるものの、それでも読む価値を失ったとはいえない。一読する価値はある。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

日本の歴史〈20〉明治維新 (中公文庫) を買う

アマゾンで購入する
中央公論新社から発売された井上 清の日本の歴史〈20〉明治維新 (中公文庫)(JAN:9784122046740)の感想と評価
2018 - copyright© アマゾン通販の感想と評価 all rights reserved.