困難な成熟 の感想

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タイトル困難な成熟
発売日2015-09-11
製作者内田樹
販売元夜間飛行
JANコード9784906790203
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想 » 人生論

購入者の感想

 私は内田さんの愛読者です。いままでずいぶんたくさんのことを教えていただきました。感謝しています。ところが最近の著作はずいぶん内容が雑になったように思います。売れっ子の作家先生だからしかたがないのでしょうけど。この本では最初「責任を取ることは不可能」と時間の関数を入れて(時間をさかのぼることは出来ないのは理の当然)論じられていますが、途中から「オレが責任をもつよ」と言明することが大切であると「責任」の中に含まれていた時間の関数を省かれています。おそらく「責任感」を持って仕事をするほうが、社会がうまく機能するといいたいのでしょうが、「責任」の定義がふらふらと変わります。責任を取ることは不可能なのにどうして「オレが責任をもつよ」などと言えるのでしょうか?そもそもの「責任」の定義からして間違っていると言わざるを得ないでしょう。
 私は生物学で生計を立てているものです。内田さんは生物学の引用になると、以前からですが途端に質が落ちます。おそらく中途半端な聞きかじりで得られたネタなのでしょう。この本では、STAP細胞をはじめから嘘と決めつけられていますが、生物学はそんなに単純なものではありません。ノーベル賞受賞者(例えばPrusiner)の論文だって、批判にさらされています。iPS細胞も、これから臨床上実用化できるかどうか不明です。iPS細胞を脳に移植する実験が計画されていますが、これは高い確率で失敗するでしょう。過去にES細胞を使った完璧な臨床試験で否定されているのです。
 STAP細胞に戻りますが、これはマスコミの典型的なマッチポンプ式報道です。冷静な判断もなしに持ち上げるだけ持ち上げておいて、いったん疑念が生じると徹底的な批判(特に個人攻撃)を毎日のごとく繰り返しました。芥川龍之介は「侏儒の言葉」の中で「輿論は常に私刑であり、私刑は又常に娯楽である。たとひピストルを用ふる代りに新聞の記事を用ひたとしても。」と書いて、するどく現在の状況を予言しています。マスコミ(特にNHK)の執拗なbashingで再生医療の世界的なトップランナーであった笹井芳樹さんを失うという最悪の結果となりました(集団リンチ殺人みたいなものです)。世界中の権威ある雑誌が笹井さんを惜しむ特集を組んでいるというに日本では全く無視されました。

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