階級都市―格差が街を侵食する (ちくま新書) の感想

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参照データ

タイトル階級都市―格差が街を侵食する (ちくま新書)
発売日販売日未定
製作者橋本 健二
販売元筑摩書房
JANコード9784480066367
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会一般

購入者の感想

 まず、本のタイトル『階級都市』にドキっとする。格差・貧困問題への認識が高まっている日本とはいえ、いまだに「階級」という言葉には抵抗感を覚える人も多いはずだ。そこを敢えて、「階級」という言葉を使っているところに、筆者のこだわりが見える。

 この本は新書ではあるが、決して読みやすい本ではない。さまざまな研究成果を取り込んだ学術的な本であり、ジニ係数やジェントリフィケーションといった抽象的な概念も使われている。よって、ある程度腰を据えて読む覚悟が必要だ。その分、感情的に格差を糾弾するだけの本とは一線を画しており、充実した内容と言える。

 
 一般的には、バブル崩壊後の不景気と規制緩和、さらにはグローバリゼーションによって主に団塊ジュニア世代を中心に貧困が広がっていると考えられがちだ。しかし、筆者はバブル前までさかのぼり、山の手と下町という地域による格差の拡大と縮小と再拡大といった事にも言及している。現在の東京都内の格差は、時代によるものだけではなく、江戸の時代より備えていた地域間の特性によるものでもある。

 
 難点をいくつか。

 この本を、東京在住でない人が読むのは少々苦労するのではないか?東京に移り住んで16年になる私も、東京都の地図を見ながら読む進めることになった。23区の位置だけでなく、区内の地名まで把握できている人は少ない気がする。まして、東京在住でない人がどこまで興味を維持して読めるか?

 それから、最終章は正直陳腐だ。「階級都市」の弊害、すなわち所得格差の大きい地域の問題を並べ、地域内の格差は小さい方が良いと言われても、そんな事は言われるまでもないことだ。格差の大きい地域では貧困層だけではなく富裕層の平均寿命まで短くなるといった指摘はショッキングだが、たとえば、住民構成の多様化、すなわち「ソーシャルミックス」を訴えても、空疎に響いてしまう。アメリカで公民権運動の高揚を受けて行われた公立学校の人種統合政策であるバッシング(通学バスを走らす事で公立学校の人種の多様化を実現しようとした政策)が、大きな反動をもたらしたなども検証されるべきだ。

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