失われた時を求めて(7)――ゲルマントのほうIII (岩波文庫) の感想

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タイトル失われた時を求めて(7)――ゲルマントのほうIII (岩波文庫)
発売日販売日未定
製作者プルースト
販売元岩波書店
JANコード9784003751169
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » フランス文学

購入者の感想

本巻の大半は、主人公がついに招かれたゲルマント公爵夫人のサロンで、いつ果てるともなく繰り返されるエリート貴族たちの、お上品にして不毛なおしゃべりの数々である。

 そこではゲルマント家の先祖たちが、欧州の数代前の王家やら高貴な家柄の英雄や偉人、有名人たちと、どのようなつながりがあるかとかないかとか、一族の従兄妹や従姉弟たちの人物評、社交界のライバルたちへの悪口や批評が、機知とユーモアと隠された差別意識にくるまれて、これでもか、これでもかとプルーストの筆にのぼされる。

 当時の超一流サロンの主役は、もちろん主人公の憧れの的であった、美しく、寸鉄人を刺す一言居士のゲルマント公爵夫人であるが、実際は不幸な家庭生活を余儀なくされているこの公爵夫妻が、まるで吉本興業に所属する人気者漫才コンビのように、かわるがわるボケとツッコミを演じるのが、西洋漫画のように面白い。

 世界中のスノッブたちから、羨望の眼であおぎみられた、おフランスの、おパリーの、ハイソサエティの、いんてりげんちゃの、おされな会話の空虚な実態を、プルーストは克明かつ執拗にあばきだすのである。

 そのうつろなモノクロームな虚妄の世界が突然打ち破られるのは、本巻の最後にわが懐かしきスワンと主人公が偶然再会を果たすシーンである。 

 余命いくばくもないことを告白するスワンと、「んなこたあわれ関せず」とばかりに情婦の待つ仮装舞踏会へ急ごうとするゲルマント公爵、そしてそんな一大事を耳にしてパーティなどに出かけてはいけないのではないか、と激しく懊悩する公爵夫人の姿は、まるで歌舞伎の大詰めで見えを切る極彩色の花形役者のトップモーションのように、私たちの心を直撃するのである。

追記 145p左注の「前面」は「全面」の誤り。至急直すべし。

 なにゆえに赤のドレスに黒い靴は駄目?ゲルマント公爵はふぁっちょん音痴 蝶人

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