NHK「100分de名著」ブックス 般若心経 の感想

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タイトルNHK「100分de名著」ブックス 般若心経
発売日2014-04-11
製作者佐々木 閑
販売元NHK出版
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カテゴリ人文・思想 » 宗教 » 仏教 » 経典

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著者は、科学者を目指して理工系で学び始めたものの、その後仏教学者へ転身したユニークな経歴の持ち主である。『犀の角たち』(大蔵出版、2006年刊)では、その経歴を生かし、仏教と科学との接点はともに「真理の発見」にある、という独自の仏教思想をまとめた。本書では、釈迦自身の教えと大乗仏教との違いを分かり易く説き、大乗仏教は釈迦の仏教を否定して、新しい宗教を宣言する運動であったことを明らかにする。『般若心経』が釈迦自身の教えではないことを本書により知った後でも、やはり最強の262文字であることには変わりがない。

著者は、釈迦の仏教の最大の特徴は「自己救済」つまり「自利」にあるが、釈迦入滅後数百年を経て、独自の路線を打ち出したのが大乗仏教の運動であるとする。「般若経」を作ったグループもその一つである。このグループは、教義の間口を広げ、在家・出家を問わず、どんな人でもブッダを目指す方法として、「般若経」を編み出した。『般若心経』はそのエッセンスであり、経文ではなく呪文であった可能性もあるとのことである。

『般若心経』の決めゼリフ「色即是空 空即是色」についての解説が興味深い。釈迦の仏教では、五蘊(色受想行識)が実在するとしているのに対して、『般若心経』では五蘊は実在の要素ではないと否定する。この他、釈迦の仏教が「ある」といったものはすべて否定される。また、釈迦のいう「空」と大乗仏教の「空」とは異なるものであることを、図解で明快に説明している。要するに、大乗仏教は、釈迦が構築した世界観を「空」という概念で無化し、それを超える新しい神秘主義的な世界観を提示した。そして、「羯諦羯諦(ぎゃていぎゃてい)」を唱えることこそがその世界に近づく最短の道なのである。

著者は、『般若心経』が、簡潔であること、しかし短すぎないこと、構成の妙があること、翻訳の見事さ、個人の心を救済するお経であること、の5点が現代日本でも人気一番のお経であることの理由であろう、と要約している。激変する社会環境の中で、精神的拠り所の一つとしての『般若心経』を新しい視点から位置付けた本書により、『般若心経』が一層親しいものになると考えられる。

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