剃髪式 (フラバル・コレクション) の感想

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参照データ

タイトル剃髪式 (フラバル・コレクション)
発売日販売日未定
製作者ボフミル・フラバル
販売元松籟社
JANコード9784879843272
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » その他の外国文学

購入者の感想

サザエさんがアル中で、助平で、もっとドジでお転婆で、さらにマスオさんが神経質で、細かい規律を重視する堅物だったなら、きっととんでもない毎日が繰り返されるだろう。そこにマスオさんのお兄さんが、二週間だけ居候させてくれ、と言いながら何年も居座ったなら、さらにとんでもない毎日が繰り返されるんだろう。

この「剃髪式」を読みながらずっとサザエさんのイメージが頭から離れなかった。チェコという遠い異国の地の物語でありながら、どこか懐かしいというか、安心するというか、何かを愛おしくなる感情を感じた。その感情がきっと自分がサザエさんに感じる感情に近いのだろうと勝手に解釈している。

サザエさんのアニメに描かれる、どうでもいい、たわいない日常を見ていると、どうしてかホッとし、愛おしくなる。それは決して私だけではなく、多くの人があの生活を見て、地面に足が着くというか、自分の居場所を確かめるのだと思う。ありふれた日常の繰り返しの中の、ちょっとした起伏や微妙な変化、それを手のひらに乗せて感触を確かめるように人々は生きていく。

この「剃髪式」には大きな変化や事件は何も起こらない。変化と言うならば、ラジオが街に登場し、皆が行列になって聞きにくることと、サザエさん?が長いスカートを自分で切って、ミニスカートを履き、長い髪をバッサリ切ってショートヘアになるくらいだ。たったそれだけでももの凄い変化なのだ。
さらにサザエさん?は、これからの時代は短いものが主流だと、斧で愛犬のしっぽまで短くしてしまう!愛犬は発狂。マスオさん?によって射殺される。ボフミル・フラバルならではの悪趣味さも心地良い。

第一次世界大戦が終わり、第二次世界大戦が始まる間の、台風の目に入ったような静けさの中で、徐々に近代化していく人々とその生活のポートレートを見ているような気がする。
実際に自分がカメラを片手に、1920年頃の生まれたてのチェコスロヴァキアを歩きながら、そこに住む市井の人を白黒のフィルムに収めては、人々の長話と与太話に、ビール片手に耳を傾けているような気分になった。
この束の間の長閑さも、いずれナチスドイツに犯され、その後はソ連に蹂躙される。そう考えると言いようのない切なさを感じる。

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