マインド・タイム 脳と意識の時間 の感想

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参照データ

タイトルマインド・タイム 脳と意識の時間
発売日販売日未定
製作者ベンジャミン・リベット
販売元岩波書店
JANコード9784000021630
カテゴリジャンル別 » ノンフィクション » 科学 » 医学

購入者の感想

よく自由意志はないことの根拠として引用されることがある「リベットの実験」を行ったリベット自身による書である。実験は 主観的な意思体験は実際の知覚より遅れ、何かを行う意思を発動する前から脳の活動は始まっているという概要であるが、実はリベット自身は自由意志はあるという立場である。それは何かを始めるのは無意識だが意思がそれを拒否する時間があるといい、その拒否には必ずしも無意識の脳の活動が先行していなくてもいいというのだが、苦しい展開に思える。 ○×は形而上学的信念と切ってしまうわりには自由意志はあるという証明は弱く自らの信念を護ろうとしているように思えた。

 脳と心の関係に関して、デカルト2元論とは違うといいつつ、2元論的な考え方を打ち出し「精神場」なるものを提唱している。これは脳という物質がなければ存在しないがそれ自身は必ずしも物理法則には従わない。むろん仮説段階だが、それならば私の感覚では2元論でよって自由意志もあると言ったほうが明確な気もする。もちろん実際にはないのかもしれないのだが。

 さまざまな哲学や形而上学的立場にも言及されており、科学者リベットと哲学者デネットの対話やデカルトとの仮想対話もおもしろい。

 心の哲学関係のことを言う前に読まねば始まらない、そのような本である。

 

 意識・心を扱った書籍には、ほとんど間違いなくリベットの名が登場する。脳科学に興味のある方なら、どこかでリベットという研究者の名前を聞いたことがあるはずである。また、そのリベットが行った研究のうち、最も引用されるものが二つある。ひとつは、光の仮現運動の研究、そしてもうひとつが意識体験がニューロン発火の後に生じる、という研究である。

 彼の研究内容はあまりにセンセーショナルな内容であったこともあり、多くの書籍や文献で引用されている。しかしながらそれだけに実際に原著に当たってみたという人はそれほど多くないのではあるまいか? たくさんの本を書いておられる大先生でも、実はリベットの研究の方法論など、詳しいところは読んだことがない、という人もいるくらいである。ましてや科学が好きな一般の人々は原著論文なんて・・・という感じであったろう。

 そんな中、リベット自身による研究内容のまとめとも言うべき本書が翻訳されたのは非常に意義のあることである。内容はぜひとも読んでその面白さを味わっていただきたいが、まず何といっても研究者自らの執筆のため、記述にあいまいな点がなく、読み進めやすいのが良い。研究内容としてはかなり高度なことを行っているのであるが、一般科学書には珍しい「ですます調」で訳されていることも読みやすさに一役買っている。このあたりはさすがに訳者の力量が光っている。

 また、ただの研究報告書に終わらず、リベット本人の考察が明快に述べられているのも興味深い。「意識と心」というある種あいまいな領域であるがゆえに、一般科学書といいながらも珍説愚説を書き並べた本が多い中で、リベットの大胆な、それでいて現在の研究結果から言えること以上のことを読者に押し付けない謙虚な科学者としての考察は好感が持てる。

 専門的な知識が特に無くとも読み始めることができる。科学に興味のある方にぜひお勧めしたい一冊。

 著者の発見の概要は,すでに多くの類書で言及されています。しかし,それらを発見者自身のことばで語ってくれる成書で,日本語で読めるものは今までありませんでした。著者の研究をもっと知りたいと願っていた者にとって,待ち望んでいた本でした。

 外界からの刺激に主観として「気付く」前に,脳はそれをとらえている。行動を起こそうと「思った」ときには,脳はすでに行動化に向けての活動を開始している。これらの「事実」を示されると,「私」という意識は,実は主体の座にいなかったのかと思われはじめ,「自分」という,あたりまえに感じられていたものが突然拠り所を失った感じがします。

 著者の研究の過程では,実験結果が隙なく組み立てられ,見事な構築物を造り上げているようです。そのため,著者の主張は圧倒的な説得力をもって迫ってきます。読後に世界の見え方が一変してしまう。しかもそれは,われわれが日々最も身近に経験している主観的体験に関わる驚きです。

 さらに著者は,「意識を伴う精神場理論」という仮説を提唱します。全てを事実に語らせてきた著者が,未知の「場」という仮定を,説明のために導入するのに面食らいました。しかし著者は,この仮説は実験的に検証可能であるとし,その計画まで提示しています。その評価は今後の研究を待たねばならないのでしょうが,大きなブレークスルーがあるのかもしれません。

主観的意識という,最もなじみのある,しかし最も謎に満ちた現象の理解が,新しい段階を迎えるかもしれない。本書を読了して,とても面白い時代に生きていると感じました。

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