現象学とは何か フッサールの後期思想を中心として (講談社学術文庫) の感想
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参照データ
タイトル | 現象学とは何か フッサールの後期思想を中心として (講談社学術文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 新田 義弘 |
販売元 | 講談社 |
JANコード | 9784061590359 |
カテゴリ | 人文・思想 » 哲学・思想 » 西洋思想 » 西洋哲学入門 |
購入者の感想
現象学関係の解説書は多いが、コンパクトで網羅的で、的確で、しかも原典から「逃げない」で真正面から語る本書は、いまだに群を抜いたNo.1。虚しい気取りもなければ、「分かりやすさ」を意識した嘘の要約もない。かといって、不安に駆られて引用に継ぐ引用で、何がなんだかわからない、ということもない。安易に生活世界や他者論とやらに逃避行もしない。フッサールの「方法論」に徹底的に付き合うスタンスは、哲学者だなあ、と感心した。個人的には、「第一哲学」の転換(非デカルト的方法)の説明は興味深かったが、改めて、フッサールがこの地点でピークを過ぎたという考えに確信を持った。本書には、もう少し、「論研」に長く付き合ってほしかった。現象学の動機というか、成立過程は「論研」にあって、「イデーン」において、現象学の体裁を整え、用語も本格化するが、すでに、思考のピークが下り坂の気配がする。「危機」書で、直観による現実との繋がりが忘れられ、数学的な操作が自立化していくことに、科学の危機を唱える辺りは、古くはヘーゲルの「精神現象学」の序論や「自然哲学」でも語られており、今更の感もあり、そもそもその問題点を埋めるべく思考するのが哲学なのだが。。。という感じが否めない。本書を手にしてその思いが強くなった。ハイデガーとの対質は本書のもう一つの読ませる場面だ。しかし、ヘーゲルとの比較や、メルロ・ポンティたちとの比較は、今となってはおもしろいテーマではないが、それも本書の研究があればこそ言えることだと思う。