伊藤真の憲法入門―講義再現版 の感想

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大学の非常勤講師（本業弁護士）で学生に憲法を教えることになり、初心者向けの適切な入門書を探しておりましたところ、憲法学者の書く入門書は学問体系に拘り過ぎ、いわゆる受験勉強という観点からすると、迂遠な解説が多くて、実践的ではありませんでした。
私が憲法の講義を担当する学生のほとんどは、司法試験には関係なく、もっぱら公務員試験に関係する程度なのですが、それにしても、やはり憲法の面白さを知るためには、ある程度のﾚﾍﾞﾙに達する必要がありますし、いわゆる論点と言われる問題点の何たるかを理解しておく必要があります。
本書は、司法試験受験を目指す初心者のための入門書ですが、ここに示された理解の程度の高さは、司法試験合格ﾚﾍﾞﾙを十分に超えています。司法試験の本番で要求される知識ﾚﾍﾞﾙは、実はそれほど高くはなく、問題の所在を把握する理解力、原理原則から考えることができる論理的思考力、問題点に関する学説のメリットデメリットを検討しうる分析力、そしてこれを答案に示すことができる文章力（表現力）が問われており、本書の記載内容は、これらの理解力・論理的思考力・分析力そして表現力を十分に凌駕しています。
正直なところ、私自身司法試験合格までに紆余曲折を経ていますが、法律の勉強を始めた当初にこのような素晴らしい入門書に出会っていたならば、もっと早くに合格できていた筈だと確信する次第です。
因みに、法律の勉強を始めたばかりの学生のために、敢えて本書と共に読むことをお勧めしたいのは、伊藤真氏著「司法試験最短最速合格法」(日本実業出版社)です。本格的な勉強を始める前に是非ともお読み下さい。