村上朝日堂の逆襲 (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトル村上朝日堂の逆襲 (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者村上 春樹
販売元新潮社
JANコード9784101001364
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 日本のエッセー・随筆 » 近現代の作品

購入者の感想

すごいな、村上春樹さんって。
なにがスゴイって、こんなに気楽に、正直に(たぶん)、文庫本を出せるなんて。
その文庫本が、平成元年の初版から始まって、平成二十六年には二十五刷。

その間に、世の中すっかり変っちゃっているのに、村上さんの本の読者は減らない。
不思議なワンダーランド。ワンダフルな本です。

村上さんによると、
「僕が書き手としてわりに仕事がやりやすかったなという雑誌はよく潰(つぶ)れている」(230頁)そうです。

それなのに、村上さんご自身の「文庫本」は驚くほど長生きしているんですね。なぜだろう?
なぜ売れ続けるのでしょう?

自分は、村上さんの飼っていた「猫の名前」を確認したくて、この本を買いました。
「猫の死について」(71頁)のエッセイを読みたかったのです。
「みゅーず」という猫の名前が、いかにも外国風なのでカタカナ表記してたのではないかな?
と疑問に思ったからです。エッセイも、ひらがなの「みゅーず」でした。国産の(?)シャム猫。

村上さんは、「この名前は名作少女漫画『ガラスの城』の登場人物からとった」(72頁)とサラリ。
村上先生って少女漫画読むんですかあ?

ふーん。マンガから、かあ。松本清張の小説からではなかった、のかあ。カアカア。
闇夜のカラスとシャムの黒猫、なんていうサスペンスっぽい取り合わせもいいと思ったんですけれどね。

ついでに、この本の他のエッセイもサラッとさらっておきました。軽いな、軽快な文章。
あまりにもかるくて要警戒。裏がありそう。逆襲が来そう。コワいな。

『村上朝日堂の逆襲』なんてタイトルは、「いかにもな」物語を想像させます。
読み終わっても、どこが「逆襲」なのか、わかりませんでした。
〈オヤジのギャグ集〉でもなさそうだし。

雑文集? エッセイ集?
どうでもいいけど、「自動車について」(66頁)という文章を読んで、驚きました。

村上さんが36歳の頃(1985年)に週刊朝日に1年間連載したもので、猫や映画や音楽、マラソンと他愛ないテーマが独特の視点と鋭さで言葉に紡がれていて、ゆるく楽しめます。基本的にはリラックスして面白おかしく読む本ですね。

偶然、当時の村上さんの年齢で本書を読みましたが、音楽についての「10代の頃に感じた骨までしみとおるような感動というのは二度と戻ってこない」という見解には、いや僕は数年前にリストのピアノソナタを聞いて革命的な衝撃を受けましたよ、と思わず一人突っ込みしましたが、そんな風にゆるく楽しめる本です。

ですが、「政治の季節」の以下の文は、資本主義が崩壊し始めた今の時代を鋭く予見しており、さすが村上さん(時代を背負える作家)だなぁと感嘆しました。

「これは単なる僕の直感にすぎないけれど、今世紀中には必ずもう一度重大な政治の季節が廻ってくるんじゃないかという気がする。その時は我々は否が応でも自らの立場を決定することを迫られるだろう。様々な価値がドラスティックに転換し、まぁ何でも適当に、はすまされなくなっているはずである」

「その経済的繁栄の底が浅いことは社会のはしゃぎぶり、そして世界的な富の偏在的状況を見ていると、20年代のアメリカと我々の時代との間にはぞっとするくらい多くの共通点を見出すことが出来る。そして、もしあの大恐慌に匹敵するクラッシュ(崩壊)がやってきたら、当時のアメリカと同じように現在の放漫な文化の周辺に寄食して生息している人士の大方は、あるいは僕もその一人かも知れないけれど、跡形もなくどこかに吹きとばされてしまうことは目に見えている」

「我々はそろそろそのようなクラッシュ=価値崩壊に備えて自らの洗い直しにかかるべき時期にさしかかっているのかもしれない。」

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