ユリイカ 2015年2月号 特集=俳優・高倉 健 の感想

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参照データ

タイトルユリイカ 2015年2月号 特集=俳優・高倉 健
発売日2015-01-26
製作者三田佳子
販売元青土社
JANコード9784791702831
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 評論・文学研究 » 雑誌・逐次刊行物

購入者の感想

高倉健ほど言葉による分析・解説が似合わない俳優もいない。昨年末の逝去以来、数多の雑誌が追悼特集を組み、いろいろな人がいろいろな場でいろいろなことを言っておられるが、どれもこれも概して言葉が上滑りしていて空疎な感をいなめない。とは言うものの、およそ目につく限りの追悼記事に目を通してきた中では、この本がベストだ。
というのも、感情を抑制する男、畏怖の対象たる「健さん」のイメージが定着した「日本侠客伝」「昭和残侠伝」シリーズよりも前の黎明期、やたらに暴力衝動を爆発させる未熟で生意気でヤンチャながら愛すべき「健ちゃん」を、収録されているいくつかの論考がきちんと取り上げているからだ。酒井隆史「高倉健の甘美なる暴力」、御園生涼子「ビヤッキー″と呼ばれた男 内田吐夢『森と湖のまつり』における高倉健のイメージ」、鷲谷花「悔恨の舟 内田吐夢監督作品の高倉健」は映画ファン必読。これらを書いた人たちは、「監督内田吐夢の存在を抜きに俳優高倉健は語れない」ことをわかっておられる。つまり彼らには「見る眼がある」ということでもある。逆に、「内田吐夢に鍛えられ、同年代で脂が乗っていた頃の石井輝男、深作欣二らとコンビを組み、鬱屈した怒りの衝動を爆発させていた黎明期の健ちゃん」も語らずに、任侠映画から壮年・老年期(新幹線だの雪山だのハンカチだのオジサマだの看守さんだの駅長さんだの)に至る健さんの「作り上げられた魅力」ばかりを云々する言葉のむなしさ、白々しさといったら無い。
ちなみに私にとっての高倉健代表作を列挙すると、「森と湖のまつり」での過激なアイヌ青年、「宮本武蔵」での傲慢な佐々木小次郎、それに「ならず者」、「網走番外地」、「狼と豚と人間」、「ジャコ万と鉄」、外国映画では「燃える戦場」での冷徹な日本軍将校と云った辺りか。「飢餓海峡」でのエリート意識とプロ意識がないまぜになった刑事も、変り種ではあるが成りきっていて良かった。概して、内田吐夢監督作で高倉健が演じた人物は、嫌な奴である。

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