見捨てられた初期被曝 (岩波科学ライブラリー) の感想

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タイトル見捨てられた初期被曝 (岩波科学ライブラリー)
発売日販売日未定
製作者study2007
販売元岩波書店
JANコード9784000296397
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » エネルギー » 核・原発問題

購入者の感想

日常的に放射線を扱ってきた研究者の手による本書は、放射線を「正しく恐れる」という姿勢が貫かれている。
本書が指摘するように、放射線管理の運用は事故前からとにかくできるだけ被ばく量を低下させるというものであり、その意味では低線量被ばくに関する意見はわかれていない。そして子どもは影響を受けやすいので、子どもを基準に考えるのが基本でなければならない。しかし放射線管理区域で認められていないことが原発事故の被害を受けた地域では認められて/強いられてしまう。

なぜこのような状況を生れたのかを考えるために、福島の事故により緊急避難的なスクリーニング基準の緩和(1歳甲状腺等価線量1000mSv)が行われ、それが即座に科学的な安全基準と騙られるようになり、さらに、それ以下ならば被曝による被害は心の問題にされるという恐るべき経過を本書で確認しておくべきであろう。

そして初期被曝がどれほどの量であったのかを丁寧に推計していく本書を読むと、その大きさに驚かれる人も多いのではないか。

さらに、福島の事故で緊急避難的に一気に引き上げられた基準が非科学的に転用され、被ばく防護措置は福島の事故以前よりも緩められている。また避難計画は、福島では地震と津波で壊れて全く役に立たなかった機器が機能することが前提の計画となっていることも本書では指摘される。

つまり事故が起こった時には福島の事故での過ちが繰り返される可能性が高いのだ。現在の日本にあるのは安全神話の復活というよりも福島の事故の否認ではないかと思える。福島で何が起きたかを見つめてしまうと原発を動かすことはほとんど不可能に思えるからだ。

原発を巡ってはおかしなことが多すぎて評者などはすぐに忘れてしまう。新たな知識を獲得できたということだけでなく、おかしなことを忘れないために、そして過去から学ぶために、本書はとても有意義だと思う。

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