老いの味わい (中公新書) の感想

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参照データ

タイトル老いの味わい (中公新書)
発売日販売日未定
製作者黒井 千次
販売元中央公論新社
JANコード9784121022899
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 著者別 » か行の著者

購入者の感想

読売新聞に月1回連載しているエッセイを纏めたもの。前著「老いのかたち」の続編である。私も気楽な調子で殆ど毎回(の筈)読んでいるのだが、纏めて読んで改めて感慨を覚えた。本書の主旋律は「老い=誰にとっても未知の体験」であり、著者が諦観でも楽観でもなく、「転ばぬ先の認識」を持って、「老い」と日々向かい合って行く姿がユーモアを交えて枯淡と綴られる。私は若い頃に著者の「働くということ」を読んで、企業人としての姿勢を学んだ記憶があるが、本書からは「老い」を迎える心境を学んだ気がする。

本書の中には、良く<物忘れ>のエピソードが登場するが、どうしてどうして、著者が語る話題は多岐に渡り、「老い」と向き合うための示唆に富んでいる。著者は「老い=肉体」と断言する(事実、病気や転倒の話が多い)が、精神的には自由闊達である事が良く窺える。そして、注目すべきは、多くの私小説とは異なり、著者の日常を単に綴っているのではなく、作家的技巧を持って各エッセイを構成している点である。特に、全体的には自然な流れのエッセイ中のラストの一節の鋭さに何度ハッとさせられたか分らない。

現在、あるいはこれから老境を迎える方には勿論の事、「未知の体験」に苦しんでいる多くの方に読んで頂きたい滋味溢れた優れたエッセイ集だと思った。

 20年ほど前から読売新聞の購読を始め、ときどき夕刊に黒井千次氏の随筆が載るのを楽しみにしてきた。それをまとめたのが2冊目になる本書だ。とにかく文章がすばらしい。こうした書物こそエッセイ賞にふさわしいと思われる。「文は人なり」というが、この本からは黒井氏の品性がにじみ出ている。70歳代、さらに80歳を超えても、年齢や老いと関係のない繊細な人柄、いつまでもいきいきとした黒井氏の精神がここに息づいている。
 だれでも本を書いて出版できるわけではない。まして出版して印税を得るには自分の文章を磨くこと、その前に何年も文章修業をしなければならない。それができないなら、ブログやフェイスブックの文で満足しなければならない。だれでもスマホやPCでメールを書いている昨今、いずれ自分も文章を書いて出版できると考える人が多いのではないだろうか。そんなに生易しいものではない。とにかくこの本をすみずみまでゆっくり熟読してみてほしい。小説家の文章とはかくあるべし、人に読んでもらえる文とはこうあるべきだと納得できるであろう。言葉のすみずみまで神経の行き届いた文章だ。
 しかし通読して、定年退職して60歳代後半をむかえている私には、60歳代から70歳代へ、そして現在83歳になられる黒井氏の、その年齢に応じた想いの移りゆき、覚悟、諦めがよく理解できる気がする。まだ実感できないところもあるだろうが、しかし齢(よわい)を重ねても精神は黒井氏のようにいつまでもしなやかにいきいきとしていたいと思う。

50代は自分の老後も視野にちらつき、60代は親の世話を考えつつ
自分の老後も心配、70代にようやく自分の老いとの付き合いが始ま
るという筆者の人生観、本書を読むと70代後半から体の衰えが文面
から感じる内容である、

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