杜甫―偉大なる憂鬱 の感想

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タイトル杜甫―偉大なる憂鬱
発売日販売日未定
製作者宇野 直人
販売元平凡社
JANコード9784582834253
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 古典 » 中国の古典

購入者の感想

 お二人が語っているように、李白の言葉がハリウッド映画のようなコンピュータグラフィックスを多用した華麗なイメージを広げるのに対し、杜甫の言葉は白黒スタンダード画面で丁寧に撮影したドキュメンタリーのような印象です。杜甫は儒教の教えを心から信じていたようで、常に農民や市井の人々の暮らしを思いやるとともに、安史の乱によってかきまわされることになった自分自身の不遇の境遇についても、それを嘆くだけでなく、もっと悲惨な人々に想いを寄せていきます。

 誰でも一度は読んだことのある『春望』。この作品は安史の乱に巻き込まれて、安禄山軍に捕虜となった杜甫が長安に幽閉された時につくったものだということぐらいは知っていたものの、究極の律詩であるという評価までは知りませんでした。というか、そもそも、律詩の形式を整えたのは杜甫だったということです。「国破れて山河あり」という大きな詠いだしから、最後は髪が抜けて冠をつけるピンもとめられないほどになってしまう、と小さな「簪(しん=冠をつけるためのピン、かんざし)」に注目する全体の流れ。さらに3・4句も5・6句も「環境〜自分のこと〜環境〜自分のこと」という公私の対比がみられ超一流とのこと(p.117)。

 太平洋戦争の終結時という大状況に、多くの日本人が思い出したのは『春望』だといいますが、それがこうした超一流の詩だったというのは、救いだと感じます。

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