宰相吉田茂 (中公クラシックス (J31)) の感想
183 人が閲覧しました
参照データ
タイトル | 宰相吉田茂 (中公クラシックス (J31)) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 高坂 正尭 |
販売元 | 中央公論新社 |
JANコード | 9784121600936 |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治史・比較政治 |
※サンプル画像
購入者の感想
「20世紀日本の保守派の知性」を代表する著者の吉田茂論はそのまま戦後日本政治の出発の歴史である。内容も文章も明解で上品。吉田は米軍占領下の首相として光彩を放ったが、講和条約が締結され独立後は不人気となり、1954年に吉田政権が終わりを告げた時は歓喜の声が湧き上がった。この毀誉褒貶の激しさは吉田個人の生き方の一貫性にある。戦前から外交官僚であり、満州国建設には積極的に参加し、三国同盟には反対(英米仏派)、戦争末期には和平工作に手を出し、憲兵隊に拘束される。敗戦後も生き方、考え方の修正が不要であったため、マッカーサー司令官の信頼を受ける。占領方針が変わり再軍備を要請されても経済優先で拒否。共産圏を含む全面講和より、早く独立できる多数講和を選択する。占領下という特殊条件下ではこれら現実的、合理的決断は評価されるが、独立後は党内や議会への説明が必要となる。選挙の洗礼を受けていない吉田は政治的駆け引きができない。独立でよみがえった戦前からの政治家に簡単に足をすくわれる。
吉田茂論のおまけとして戦後政治の問題点へのコメントが展開されている。現在に通ずる点、多少は改善されたかなと思われる点等々、興味は尽きない。
吉田茂論のおまけとして戦後政治の問題点へのコメントが展開されている。現在に通ずる点、多少は改善されたかなと思われる点等々、興味は尽きない。