弱いつながり 検索ワードを探す旅 の感想

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タイトル弱いつながり 検索ワードを探す旅
発売日販売日未定
製作者東 浩紀
販売元幻冬舎
JANコード9784344026070
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » エッセー・随筆

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購入者の感想

結論:「弱いつながり」理論は立脚する論文解釈に重大な誤りがあり、破綻している。
解説:グラノヴェターの「弱い紐帯」では、【A→ブリッジ→B】という関係において、ブリッジの重要性、ブリッジにおける弱い紐帯の効率性を説いている。 一方で東氏は、【A→B】という関係において、B(ノイズ)が重要であり、Bに接触するために旅に出ようと主張している。 論文解釈を間違えたために、このような齟齬が起こっている。主張の立脚点に重大な誤りがある以上、この理論は破綻していると解するのが妥当である。

その他:
(1)はっきり言って、徹底して読みづらい。文章構成、語の使い方、検証可能性の無さから、著者が何を言いたいのか理解するのに相当時間が掛かる。巷では読みやすいと評判だが、到底そうは思えない出来であった。例えば、台湾に関する項で、本省人と外省人の話が出てくるが、語の定義が「台湾人(本省人)と外省人」となっており、以降「台湾人/外省人」という定義で話が進む。これは相当読みづらい。尚、台湾では本省人と外省人の区別は無意味という意識が一般的とされているにも関わらず、このような書き方をしてしまうのは単純に下調べが足りないと感じる。Webで検索すればこの程度の情報はすぐに見つかる。
(2)インドのケーララ州に関して、高放射線地帯に関する項があるが、この項に書かれている情報はめちゃくちゃである。具体的に言えば、「高いところでは年間20ミリシーベルトぐらいあり、一部では双子の出生率が有意に高いそうです。(P28)」と書かれている点だ。この双子の出生率の話はケーララ州コンディヒ村の話だが、双子の出生率と放射線量が有意だとする研究報告は無い。端的に言ってデマである。双子の高発生という現象もコンディヒ村に限った話ではない。これも検索すればすぐ分かる程度の情報である。推測に過ぎないが、「高線量地域では統計的に有意に生殖細胞由来の点突然変異が高い傾向にある」という報告と、混ぜこぜに記憶しているのだろうと思われる。この話は福島の話と連結しているのだが、このような間違いが広まるのは非常に危険であろうことも推察される。

ネットが普及し、リアルタイムで地球の裏側の自分と同じような普通の人間が何をしているのかを動画で見ることなんてわけもない時代である。テレビでも芸能人がこれでもかと地球の隅々にまで出かけてありとあらゆる名物や秘境を案内してくれる。「兼高かおる世界の旅」(古!)をわくわくしながら観ていた時代から思えば遠くにきたものだ。自分より若い世代は「海外への憧れ」といった感情が明らかに希薄だ。海外は彼らにとってはいつでも行けるところであり、とりたてていく必要のないところでもある。

それでもわざわざ出かけて行って「現地」で「現物」を見よ、というのがこの本のメッセージである。でも、沢木耕太郎、小田実、安藤忠雄……など、いま中年のおじさんおばさんに「旅をせよ」と教えてくれた人たちの教えとは違う。この人たちは自分探し、日本人探しの旅だった。東が提唱しているのは乱暴にいえば、自分逃れ、日本人逃れの旅ともいえる。「ぼくたちはいま、ネットのおかげで、断ち切ったはずのものにいつまでも付きまとわれるようになっている。強い絆をどんどん強くするネットは、ぼくたちをそのなかに閉じ込める昨日も果たす。旅はその絆を切断するチャンスです」と。

そしてそれはバックパッカーのような貧乏旅行でなくても、家族旅行でも買い物旅行でもなんでもいいのだ、と東は言う。途上国で貧困を見なかったから「その国を見なかった」ということにはならないと。「観光はたしかに軽薄です。観光地を通り過ぎていくだけです。しかし、そのように『軽薄』だからこそできることがある」と。

それでこの人が福島を観光地化する運動を起こした意味がわかった。あまりにも深刻な福島の「真実」に目を向けることなく物見遊山、興味本位で「見に行く」なんて失礼ではないか、という一見真面目な考え方が原発事故の風化をいっそう推し進めてしまうことを東は危惧する。ただ海外に行っても物売りやガイドや運転手との会話からは表層的な理解しか得られないという考え方もあろうが、そこに出かけていくことでしか「表象不可能性」の壁を超えることはできない、ということである。「ネットには、そこに誰かがアップロードしようと思ったもの以外は転がっていない」「言葉にできないものを言葉にするには現地に行って体験することしかない」と東は言う。

著書である東浩紀氏の作品は、一通り目を通しているが、
その中でもいちばんの良い本だと感じた。
本を買ってもたいていの読み終えるとブックオフなどで売ってしまうのだが、
本書は本棚に収めて、時々読み返したいと思ったほど。

まず「SNSやネットは友達や同僚など強いつながりを、より強くするメディア」
という冒頭の指摘に、そうそう!と深くうなずかされた。

スマホやPCをいじっていても、自分の興味のある情報だけしか目の前に出てこない。
Googleが改良されてばされるほど、人生に「出くわし」がなくなってしまう。
それは驚きや発見がない日々とイコールであり、すごくつまらないものだ。

Googleの予想を裏切るには、自分の中に新しい欲望(検索ワード)を作るしかない。
その方法が、身体を移動させること=「旅」ということだ。



著書が言うように、人生において「平均」など意味がない。
10回人生を生きることが出来るのなら、平均値は意味があるがそれは不可能だ。
ならば、この一回の人生をGoogleの予想を超えるものにしたいと素直に思った。

ネットをたまには捨てて、旅に出よう。

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