天皇制の隠語 の感想
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参照データ
タイトル | 天皇制の隠語 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | スガ 秀実 |
販売元 | 航思社 |
JANコード | 9784906738076 |
カテゴリ | 本 » ジャンル別 » 文学・評論 » 評論・文学研究 |
購入者の感想
秀美の『1968』は「あの時代」を解明した希有な著作であった。『天皇制の隠語』は、それ以上に、抑圧的本質を内包した市民社会論の水脈を解き明かしている。「天皇制」という対象を「封建制」という隠語で隠蔽し、隠蔽することによって市民社会を称揚してきたのが近代知識人であった。しかし、その市民社会がなんであるのか、なにをもたらすのかは突き詰められなかった。ようやく民主党政権という遅れてきた「革命」によって、それがあらわになり、その無様な終焉から「市民」「市民社会」の問題がわれわれの前に突きつけられたとも言える。しかし、市民社会論を公共論に塗り替えることで冷戦体制終焉以後を乗り切ろうとした旧講座派は批判法学を取り込んで正義を(その由来を説明しないまま)振り回している。「律法と正義」を理解していない日本人は、正義をあたかも無前提に、そこにあるかのように、いや「原郷」であるかのように語り始めている。罪の上に罪を重ねつつある。彼ら旧講座派の残骸に判決を下す好著である。