メルニボネの皇子 の感想

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参照データ

タイトルメルニボネの皇子
発売日2013-12-24
製作者マイクル ムアコック
販売元早川書房
JANコード登録されていません
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 英米文学

購入者の感想

 「ファンタジー好きなら、絶対に読め」と友人に強く勧められたのがエルリック・サーガを知るきっかけでした。それまでは、エルリックも、ムアコックについても、私は全く知らなかったのですが…。新装版が出るらしいと聞いて、借りないで本屋に並ぶのを待っていました。

 待って良かった、と心から思います。世界観、登場人物、どちらをとっても一級品。多元宇宙、並行世界を基盤とした世界を旅するエルリックの冒険は、奇妙でありながらも実に美しく、引き込まれてしまいました。セリフの端々で垣間見えるエルリックの悲劇の運命にハラハラしながらも、ページをめくる手は何度も止まり、戻りました。謎かけのようであり、詩的な言い回し。流れるように変化する情景。面白い、けれど同時に私の想像力を超えた作品でもあったのです。実のところ「真珠の砦」の夢世界での情景描写は、明確なビジョンが描けず、捉えきれないものが多かったです。「描写を視覚的に捉えること」がこれほど難しいと思った作品は初めてでした。(訳者はそれを「実体のない映像」とあとがきで述べています)

 しかし、エルリック・サーガにおいてそれは欠点だというのではなく、むしろ私にとって新しい発見でした。視覚的に映すことが難しいのに、場の雰囲気や空気の変化が見事に、実感として伝わってくるのです。物語の世界と、私の体内や記憶の奥底とが繋がりあっているかのような手応えがあります。この一体感は何なのでしょうか?

 全く新しい感触の物語。2巻も、もちろん買うつもりです。「エルリック・サーガ」私にとって、忘れられない作品になりそうです。

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