すぐわかるギリシア・ローマ神話の絵画 [改訂版] (すぐわかるシリーズ) の感想

163 人が閲覧しました

世の中に神話と言われるものは多数存在するが、ギリシャ神話ほど多くの人に親しまれているものは少ないのではなかろうか。
これは勿論、世界中で出版され、幅広く読まれているからであるのは言うまでもないが、それだけではなく、西洋美術の題材として取り上げられる機会が多かった事もその背景の一つにあるだろう。
だが、その一方で、余りにも多数の神やニンフが絵画の世界に登場している所為で却って混乱してしまったり漠然としか知らなかったり…という方も多いかもしれない。
そのような方達の為に手引書として解り易くコンパクトに纏められたのが本書である。

本書の内容は下記の通りである。
第一章「オリュンポスの神々」
第二章「恋する神々」
第三章「ヴィーナスとキューピッド」
第四章「巨人・英雄・怪物」
第五章「ニンフと人間」
第六章「トロイ戦争とホメロスの世界」

上記の通り、絵画で扱われた題材はくまなく網羅されている。
そして、中でも傑作と評される知名度の高い作品を数多く掲載しているのは勿論の事、神話の簡単なあらすじ、掲載作品の説明、アトリビュート（即ち目印）を丁寧に纏めており、更には有用なコラムまで載せてくれているのだ。
画像の質も申し分なく、誰でも楽しめる一冊となっている。
特に、限度こそはあるものの、極力偏る事無く多くの画家の作品を選んで紹介しようという気持が編集にも表れており、それぞれの画家の表現の個性が比較出来る点は非常に興味深かった。

勿論「すぐわかる」等と題されている事からもお解かりのように初心者向けに書かれた本である事は間違いないが、内容は非常に纏まっていて奥が深いし、何よりも簡潔明瞭な文章には好感が持てる。
既にギリシャ・ローマ神話の絵画に慣れ親しんでいる方にとっても手元に置いておくと便利な手引書となってくれると思うので、一冊入手しておくと便利なのではなかろうか。