韓流時代劇と朝鮮史の真実 (扶桑社新書) の感想

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タイトル韓流時代劇と朝鮮史の真実 (扶桑社新書)
発売日販売日未定
製作者宮脇 淳子
販売元扶桑社
JANコード9784594070717
カテゴリ歴史・地理 » 世界史 » アジア史 » 韓国・朝鮮史

購入者の感想

韓流ドラマは、今も、視聴者の心を捉えているのだろうか?韓流ドラマに、そもそも関心のない者にはこの答えは分からない。一世を風靡した「チャングム」というドラマを7、8回、見たことがある。壇ふみに笑顔が似た女優が現れて、宿敵と料理合戦を重ねる。それ自体は面白かったが、まもなく見るのをやめた。どのように考えても、「チャングム」の持つ価値観は近代の日本人の価値観そのものであり、李氏朝鮮宮廷の実態は、「チャングムのいない権謀術数の世界」 と見ることが正しい。つまり、あのドラマから「チャングム」を削除しない限り、実際の韓国史にはならないと思えたのである。
本書はしかし、それすらが間違いである、少なくとも概ね正しくないことを教えてくれる。
「宮廷女官チャングムの誓い」(2003年) は、「儒教思想による厳格な身分差別制度があった李氏朝鮮時代、女性でありながら王の主治医まで上り詰めた主人公チャングムが『大長今』という称号を得るまでのサクセスストーリー」である。チャングムは、「李朝実録」に出てくる実在の人物であるが、物語は「100%フィクション」と韓国制作サイドは説明する。その説明によれば、前半の見せ場である「料理対決」は、日本の「将太の寿司」(1992年〜「少年マガジン」で連載された漫画。寿司職人の主人公がライバルたちと対戦しながら最終的に日本一になるという物語) にヒントを得て取り入れたのだが、予想外に評判が良かったので延々と続くことになってしまったという。「料理人」が「医女」になった、ということが売り物の物語が、「料理対決」になってしまった本当の理由はこれだという。

「日本人はつくる側にしても観る側にしても、例えば大河ドラマのような歴史ドラマと、『暴れん坊将軍』や『水戸黄門』といった時代劇は違うものと考えていて、フィクションの入れ方にも程度の差があると思います。ところが韓国の歴史ドラマの場合、そもそも元の史実があやふやなこともあって、これ幸いと見境なしに突っ走るのです」。

韓流時代劇7本を選び、その内容と史実の違いについて解説した本。2013年8月に発行されたものを新書化している。歴史ドラマに創作されたエピソードが加えられたりするのはどの国でも珍しくないが、韓国の場合は自分達の歴史の正統性や優越性を主張するために確信犯的に過去を美化したものを作成しており、その程度がかなり極端でひどいのだという。それを具体的に古い時代を扱ったドラマから1本ずつたどって指摘し、実際はどうだったのか説明してゆくという主旨になっている。

紀元前37年の話なのに、当時はありえなかったゲームキャラのような立派で近未来的な鉄の鎧を着て、今の中国東北地方はもちろん南京あたりまで古朝鮮の領土にしてしまっている「朱蒙」。高句麗の領土が満州全土やシベリアにまで広がっていたとし、中国の山東半島に西百済なる国もあったとしている「太王四神記」。さらに「善徳女王」「龍の涙」「宮廷女官チャングムの誓い」「ファン・ジニ」「イ・サン」と続く。そして、「創作したストーリーの中に絶妙に史実をはめ込んで、まるで真実の歴史を描いているかのようなドラマを仕立て上げるテクニックには舌を巻きます」と、著者は述べている。

単に韓流歴史ドラマのおかしいところや特徴について書いているだけではない。実際の史実はどうだったのかについても説明しているので、歴史の勉強になる。著者はモンゴル史の専門家なのだが、朝鮮半島の歴史は中国東北部との関連性が強いため、これは意外な強みとなっている。例えば、ハングルがかつてアジアを席捲したモンゴルのチベット文字利用策に由来している可能性が高いというような指摘などがある。また、東洋史に詳しい古田博司氏の解説が多く引用されている。

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