戦後史のなかの日本社会党―その理想主義とは何であったのか (中公新書) の感想

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タイトル戦後史のなかの日本社会党―その理想主義とは何であったのか (中公新書)
発売日販売日未定
製作者原 彬久
販売元中央公論新社
JANコード9784121015228
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

 1939年に生まれ、ケンブリッジ等の客員研究員となった、日米安保体制を研究する国際政治学者が、2000年に刊行した本。著者の政治的立場は、170〜175頁と終章を参照のこと。敗戦直後に西尾ら右派主導で、社民系(反共右派)、日労系(マルクス主義中間派)、日無系(労農派=マルクス主義左派)が合流して、日本社会党は結成された。ただし、彼らは軍国主義者と相互往復する素地があり、またGHQの民主化政策の後塵を拝していた。1947年一応第一党となった社会党は、右派主導で連立政権をつくり、日米結合体制を模索するが、党内左派の造反や小分裂により下野する。1950年前後、平和主義を採択した社会党は、総評と結合し、永久政権論・反米・前衛主義を掲げた左派の優位を徐々に明確化してゆき、1960年の右派離党=民社党結成や、市民社会主義=江田構造改革論の挫折をひき起こす。このように社会党は、党内の分裂を収拾しえず、裏面での熾烈な権力闘争と、表面での曖昧な態度を繰り返す。外交面でも、各国の冷厳な権力政治や党内闘争に翻弄され、日本の野党第一党としての存在感を示すことができなかった(ただし、自民党の対米交渉の際には、社会党の存在が役に立った)。80年代半ばに西欧型社民主義に移行したものの、結局社会変動から取り残された社会党は、1993年の自民党分裂まで、連立という形であれ政権交代を実現することはできず、万年野党に安住した。90年代半ばの、政策大転換=なし崩しの現状肯定と社会民主党への改称は、同党の衰退を決定的にした。主観主義的で現実から遊離した「理想主義」、しかも議会主義を軽視したそれ(要は対話軽視?)こそが、結果的に自民党一党支配を利し、政治不信を重層化させた、というのが著者の結論である。社会経済的分析の少なさ、院内闘争の偏重傾向はあるが、私は著者の姿勢に基本的には首肯できる。

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