経済大陸アフリカ (中公新書) の感想

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参照データ

タイトル経済大陸アフリカ (中公新書)
発売日販売日未定
製作者平野 克己
販売元中央公論新社
JANコード9784121021991
カテゴリビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 各国経済事情 » その他の国々

購入者の感想

ジェトロの平野氏の著書は読みやすくデータは緻密。近代アフリカの経済を知るならこの一冊は絶対に読んでおきたい。

中公新書はいい仕事しています。物語歴史シリーズも素晴らしいが、現状を説明したこの本のような系列も手抜きがなく、素晴らしい。

 四川省の成都へ出張に行ったとき、トランジットで広州の空港を使った。そこでアフリカ系と思われる人たちがたくさんいるのに驚いた。他の国のアジアの空港ではあまりみない光景。中国とアフリカの関係が深いのは知識では知っていたが、実際に肌で感じて驚いた。この本は以前購入して積読状態だったが、広州空港でみたアフリカ人に刺激を受けて読み始めた。

 読んで驚いた。もう一度読もうと思った。アフリカというより世界の仕組みが書いてある。少なくとも食糧とエネルギーの世界の循環の構造が書いてある。そこから見えるアフリカを説明している。型破りなアフリカの説明方法だと思うが、非常に分かりやすいし内容が深い。一度読んだ本はめったに再読しないが、この本はぜひもう一度読みなおそうと思った。

 中国のエネルギー事情から説明をはじめ、いかに中国がアフリカと太いパイプを作っているかの説明を行い、資源価格の高騰とそれに誘発されたアフリカへの投資がいかにアフリカを変えているかの説明へと続く。そして食糧需給と各国の需給状況、食糧収支の考察からいかにアフリカが世界の変動要因であるのかの説明へと続く。製造業、農業の生産性発展がない状態でのアフリカの経済発展はこのままいくと膨大な食糧不足を世界に引き起こす可能性を示唆する。

 アフリカだけの説明に留まらない、ロシア、アメリカ、アルゼンチン、オランダ、日本、東アジアの新興国。これらの国とアフリカを比較しながら、類似性、違い、など述べ、アフリカの現状を説明していく。この該博な知識と研究は相当な実力の持ち主だろうと感じられる。すごい。この人の別の本『アフリカ問題―開発と援助の世界史』も読んでみたいと思う。

 アフリカが意外と人件費が高いことが述べられている。東アジア的製造業の人件費の安さを利用した発展もすべての途上国に共通な現象ではないこともあらためて教えられた。歴史は単一に発展するわけではないと、若い時マルクス主義者の議論をバカにしていたが自分も同じ間違いにはまっていることに気づかされた。

アルジェリア人質事件の前に発行が決まっていた同書の発行のタイミングが絶妙すぎたのは仕方ないとして、55カ国のアフリカ(特に政治・経済)を知るのに適した良書。アフリカ研究をする人にとってすれば、入門編になるのかもしれませんが、内容は、結構ヘビーです。アフリカ関係では、講談社現代新書の『新書アフリカ史』以来の良作です。

「資源産業はそれほど多くの雇用を生まないので、経済成長の果実が社会に広くは裨益しない」(p.90)
「アザワドの独立宣言……東アフリカにおけるソマリアと同様に治安対策の及ばないエアポケットができてしまった」(pp.96-97)

「グローバリゼーションとアフリカ」を軸に、資源、食糧問題、開発政策、米英仏中のパワーポリティクスとイスラーム原理主義、実は高い人件費、東アジアとアフリカを比較することで1955年時点では同じ水準だった所得がなぜ、こうも開いてしまったのか、10億人を対象としたBOPビジネスなどなど、この本の与える視座は多すぎる!!

924円でいいんかいというほどの廉価でこれだけの情報を提供してくれる本は世の中にもまれです。国際政治、地域研究、開発論に関心のある方のみならず、一度はアフリカを訪れてみようかなと考えたことのある方必読です。

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