紫式部の欲望 (集英社文庫) の感想

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タイトル紫式部の欲望 (集英社文庫)
発売日2014-04-18
製作者酒井 順子
販売元集英社
JANコード9784087451788
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » エッセー・随筆

購入者の感想

酒井順子は進化しているなあ。ブログで一億総エッセイスト化しているいま身辺雑記、自分ネタでは続かないこの分野で、自己啓発に手を伸ばしたり、レシピ本や対談本に逸れたりすることなく、文章だけで勝負し続けている姿勢、本当にブレない書き手だと思う。ジャーナリズムには「調査報道」という分野があるが、酒井順子はさしずめ「調査エッセイ」だ。『紫式部の欲望』は、ポップな源氏物語解題なのだが、紫式部に心理分析、および著者自身の自己分析にもなっている。源氏物語に描かれている1000年前の貴族階級の人たちの日常生活は、私たちから見たら変態?犯罪?と思えるような部分もなきにしもあらず(というかかなり多い)。そのあたりにも鋭いツッコミをいれつつ、身分や世間体に縛られ、後ろ暗い欲望を抱えて生きている登場人物たちを、意外なほど私たちに身近な存在として感じさせてくれるあたりが、酒井順子の真骨頂。なかでも味わい深かったのはモテ男光源氏を苦しめ続けた天敵、弘徽殿女御のヒールっぷり絶賛と、その息子で源氏とは腹違いのぼーっとした兄、朱雀帝に対する意外な高評価。眩しいほど成功している人間の失脚をひそかに願望したり、お人よしを馬鹿にしつつも最後は頼ったりという人間のどうにもいびつな心の中を、酒井順子と紫式部がほじくりかえす、1000年の時を超えたコラボレーションな一冊。

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