吉本隆明〈未収録〉講演集2 心と生命について (シリーズ・全集) の感想

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参照データ

タイトル吉本隆明〈未収録〉講演集2 心と生命について (シリーズ・全集)
発売日販売日未定
製作者吉本 隆明
販売元筑摩書房
JANコード9784480788023
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

90年代の作品が多いようで、まだまだ元気だった時期だし、メジャーになって大御所感さえある。読んだことのない作品が多く収録されており、長年の読者である自分としてはびっくり。この人の多産性は尋常じゃない。でも、やはり吉本隆明のピークはサラリーマンと兼業だった時期というのが持論。どうも話題の構えが大きくなり、なんとなくこの人が言わなくたっていいじゃないかという必然性がないものも多い。専門的な哲学者の知識なぞ問題にしないだけの着眼点の鋭さ動物的な、と言いたくなるような身骨に響く展開も、薄らぎ、却っていい加減さが感じられる時さえあった。この本では、フーコー論はがっかり。フーコーと関係のない話、日本の法制度や天皇制の話、それはそれで面白いし、年季の入った部分だけど、やっぱりフーコー論と繋げるのは無理だ。ヘーゲル論は流石に素晴らしいが、気づいたのは、この人は、ヘーゲル論理学と歴史哲学、それと意識論は圧倒的な把握力と自己の思想の展開力だが、法哲学、社会論は案外的外れだと思う。だいたい「法権利の哲学」のRechtが法律のことだと思っているあたりが、今では普通の読者でも、そりゃあおかしいよ、と気づくのに。Rechtは正義のことで権利のことで、あの本でヘーゲルは法律については一部でのみかたっているだけ。また道徳も法律もSittlichkeitの章で総合的に展開されるわけで、第一部の「抽象的な法」だけでの議論みたいなことをヘーゲルの法哲学の全てみたいに語っているのはおかしい。ルソーの一般意志と大差のないかのように語るのもおかしい。ヘーゲルの思想が、ルソーら啓蒙思想とも、歴史学派とも、異なる「概念としての法」という意味合いがフォローできていないと思う。ヴェイユ論は頼まれて書いている感じで、正直何が魅力な思想家なのか感じるものはなかった。他の話題も総じて、最盛期より雑な感じで、深掘り感がなかった。だけどこれだけの話題を自身の言葉で展開できる壮大さはやっぱり圧巻だとは思うし、アカデミズムとは無縁の本物の批評に出会えることは間違いない。

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