仏教誕生 (ちくま新書) の感想

仏教と一口に言っても、いろんな宗派があり、国によっても様々である。もともとの仏教はどういう宗教だったのか？お釈迦様は一体なんで偉いのか？そのシンプルな疑問にズバリ答えてくれるのがこの一冊。
著者／宮本啓一氏は、宗教家ではなく、思想研究家。「線香臭さ」は全くない。お釈迦様を『経験論とニヒリズムに裏打ちされたプラグマティスト』と結論づける。と言っても、本書は非常に読みやすく、読者の好奇心を実にうまく引き出す文体をとっている。哲学用語に詳しくない読者でも、本書は充分にエンジョイできる。私は國學院大学在学時（10年以上前）に宮本氏の「インド思想史」を受講していたが、未だに先生の開口一番：「何故にインドでヨーガが発達したか？それは暑いから」という言葉が忘れられずにいる。
お釈迦様を「実はこんなヤツだった」という感じで、史実（憶測を少々交え）から興味深く解説していく。そして「外道」なしに「仏教」は語れない、と。
仏教について知りたい読者はもちろん、禅問答に頭を悩ませている方にも、ぜひおススメ。