物語 哲学の歴史 - 自分と世界を考えるために (中公新書) の感想
参照データ
タイトル | 物語 哲学の歴史 - 自分と世界を考えるために (中公新書) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 伊藤 邦武 |
販売元 | 中央公論新社 |
JANコード | 9784121021878 |
カテゴリ | ジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想 » 哲学 |
購入者の感想
ギリシャから現代にいたる長大な西洋哲学の歴史を、主要な登場人物を中心にまとめた本である。「物語」という表題からライトな印象を受けるかもしれないが、割合に硬質な文章で個々の哲学者の主張を丁寧に説明しており、それらをぎっしり詰め込んだ300頁超の作品に仕上げているため、新書ながらじっくり読んでいくとけっこう知的体力を消耗するが、その分読み終えた後の充実感は間違いなかろう。お手軽な知識や人生訓を得るためでなくほんとうにじっくりと哲学をしたい、し始めたい読者にこそすすめたいと思う。
新書の枠内という制約はあるができるだけ万遍なくとりあげる、という意図はよく感じられ、プラトン、アリストテレス、アウグスティヌス、トマス・アクィナス、デカルト、ライプニッツ、スピノザ、ロック、ヒューム、カント、パース、フレーゲ、ラッセル、ヴィトゲンシュタイン、クワイン、ショーペンハウアー、ニーチェ、ジェイムズ、ベルクソン、ドゥルーズ、ギブソンら「エコロジカルな心の哲学」などなど、多くの重要人物にバランスよく頁が割かれている。もちろん、著者の専門や趣味は当然出てしまうもので、同時代の自然科学の進展を強く意識している哲学者を重視する傾向が強く、近現代では英米系の学者への比重が明らかに大きい。逆に、たとえばヘーゲルやハイデッガーについてはかなり簡素な記述しかなされておらず、このあたり文句をつけたくなる人もいるだろうが、著者の個性として興味深く受けとめることもできよう。少なくとも党派性のようなものは感じなかった。
「広大な宇宙の片隅の、そのまた片隅の、地球という星の下に生きるまったく無力な人間が、その思考力だけを頼りにして宇宙全体の成り立ちを考え、そのなかで生きている自分の位置と意味とを自力で反省してみる。これは間違いなくパラドキシカルな企てである」。本書冒頭にある著者の哲学に対する見方のひとつだが、なかなか広大な視座でぐっと心をつかまれた。この矛盾をはらんだ壮大な知的営為の歴史について、著者とともに考えてみたい方は是非本書を手に取られたい。
新書の枠内という制約はあるができるだけ万遍なくとりあげる、という意図はよく感じられ、プラトン、アリストテレス、アウグスティヌス、トマス・アクィナス、デカルト、ライプニッツ、スピノザ、ロック、ヒューム、カント、パース、フレーゲ、ラッセル、ヴィトゲンシュタイン、クワイン、ショーペンハウアー、ニーチェ、ジェイムズ、ベルクソン、ドゥルーズ、ギブソンら「エコロジカルな心の哲学」などなど、多くの重要人物にバランスよく頁が割かれている。もちろん、著者の専門や趣味は当然出てしまうもので、同時代の自然科学の進展を強く意識している哲学者を重視する傾向が強く、近現代では英米系の学者への比重が明らかに大きい。逆に、たとえばヘーゲルやハイデッガーについてはかなり簡素な記述しかなされておらず、このあたり文句をつけたくなる人もいるだろうが、著者の個性として興味深く受けとめることもできよう。少なくとも党派性のようなものは感じなかった。
「広大な宇宙の片隅の、そのまた片隅の、地球という星の下に生きるまったく無力な人間が、その思考力だけを頼りにして宇宙全体の成り立ちを考え、そのなかで生きている自分の位置と意味とを自力で反省してみる。これは間違いなくパラドキシカルな企てである」。本書冒頭にある著者の哲学に対する見方のひとつだが、なかなか広大な視座でぐっと心をつかまれた。この矛盾をはらんだ壮大な知的営為の歴史について、著者とともに考えてみたい方は是非本書を手に取られたい。