世紀の空売り―世界経済の破綻に賭けた男たち (文春文庫) の感想

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参照データ

タイトル世紀の空売り―世界経済の破綻に賭けた男たち (文春文庫)
発売日2013-03-08
製作者マイケル ルイス
販売元文藝春秋
JANコード9784167651862
カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

購入者の感想

 『KY』 空気を読めない、読まない、読む気もない。読めても「コイツラ全員間違えてる」と自分を信じる。そんなアウトサイダー達が本書の主人公だ。風見鶏にドロップキック(したい)、そんな読者にとって本書は痛快である。

 第1の登場人物スティーブ・アイズマンは『他人の機嫌を損ねる才能に恵まれた男』である。自分が上場を担当した企業をこき下ろしたレポートを書いて気分が良いと言う。

 隻眼の医師マイケル・バーリは、人の言外の意図を理解できず、自分の意図も伝えられない。しかし興味を抱いた物への並外れた集中力を持ち、誰でも入手できる財務諸表を精読するだけで市場の歪みを発見する。
 バーリは世の趨勢に異を唱えることが自分の務めだと考えており、サブプライム・ローンの詐欺に近いデタラメを見抜き、崩壊する方に賭ける。空売りの手段はCDSの購入である。

 本書では各章でKYな人物の才気を描きながら商品の説明も行う。関係者の思惑が見えると金融商品も理解しやすい。CDSは保険のような物だ。震度3で崩れる住宅を見つけ、勝手に地震保険に加入したようなものだ。次の地震まで保険料を払えば何十倍になって返ってくる。
 CDOはCDSをミックスした商品だ。無能な格付け機関のおかけで、トリプルBのCDSの山がトリプルAのCDOに生まれ変わる。

 彼らのカモは投資銀行や保険会社などだ。過去の延長でしか将来を予測出来ないエリート集団が、強欲さゆえに崩壊していくさまは痛快である。特にモルガン・スタンレーのハブラー率いる超エリート軍団は、数千万ドルの法外な給料を貰いながら最後まで本質を理解できず、90億ドルの損失を同社にもたらした。 

 世紀の空売りは金融機関を破綻に追い込み強欲相場師を市場から追い出した。しかし彼らがそれまでの不当な高給を返す事はなく、金融機関は税金で救われた。一方貧しい借り手には膨大な借金が残った。

 残念ながら読後に残るのは痛快さだけではない。

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