社会契約論: ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ (ちくま新書 1039) の感想

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参照データ

タイトル社会契約論: ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ (ちくま新書 1039)
発売日販売日未定
製作者重田 園江
販売元筑摩書房
JANコード9784480067425
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会一般

購入者の感想

入門書と銘打たれてはいるが、バランスの良い解説など期待してはいけない。
軽い(ときに軽薄な)文体にも拘らず、古典的な思想家と対決してその核心を
抉り出そうとする著者の歓喜の声や苦痛の呻きがこちらに伝わってくるような、
そんな緊迫感にあふれた本だ。

4人の思想家にそれぞれ1章が割り当てられている。主役はルソーとロールズであり、
ホッブズは彼らに先立つ社会契約論の創始者、ヒュームは社会契約論の敵役である。

冒頭のホッブズの章は出来が悪く、一貫性の薄い独断的な論述が目立つ。
最終的にホッブズは約束の力に全てを賭けたというのが著者の理解のようだが、
「初めに約束ありき」というのは神学的な解釈類型の変奏曲にしか見えない。

ところがヒュームを経てルソーの章になると、まるで別人のように筆が冴え渡る。
難しいとぼやきつつも、ユニークな例を交えてルソーの思想を鮮やかに構成する。
特に、フーコー的な視点からの政治経済論の歴史的位置付けが印象的だった。

ロールズについての最終章もなかなかに読ませる。「ロールズ・インダストリー」の
動向など歯牙にもかけず、ひたむきにルソー思想との連続性をつかみ出してゆく
議論は痛快ですらある。

個々の論点に関してはさまざまな異論が百出するであろう。
しかし、このような冒険的な入門書があってもよいと、個人的には思う。

真摯な読者には、著者と思想家とが対峙する場の息遣いが聞こえるに違いない。
その瞬間、人は思想史の営みというものを、その快楽とともに理解するのだ。

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