現代小説クロニクル 1975~1979 (講談社文芸文庫) の感想

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タイトル現代小説クロニクル 1975~1979 (講談社文芸文庫)
発売日販売日未定
製作者中上 健次
販売元講談社
JANコード9784062902458
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学

購入者の感想

中上健次作品 紀州サーガあるいは”秋幸”もののプロローグである。短い文を重ねて、硬質の文章世界を作り出している。まだ、路地のテーマは表立ってでてこない。自分を捨てた父である悪辣な人物が直接登場しないながらも作品全体を覆っている。秋幸は最後、象徴的に父に復讐するのだが、このテーマは中上作品の愛読者ならご存知のように次作に向けて加速して行く。家族、血統をめぐる物語。

田久保英夫作品 古くからの知り合いで年下の変わった女性に男が、ふと激情をほとばしらせる。名作とされているようだが、今ひとつピンと来ないのは、時代が変わったせいだろうか。

富岡多恵子作品 今ならギョッとしてしまうような結婚と妊娠中絶をめぐる話題がでてくる。不幸と幸福についての、大衆の現実的な考え方と対処が描かれている。知識人批判が裏テーマか。

三田誠広作品 発表当時から世評の高い作品だったが、題名が気に入らず、小馬鹿にして未読だったが、今回読んで反省しました。学生運動盛んな時代で自分探しをする主人公。彼が客観的に距離を置いて描かれている点が良い。ひょんなことからセクトの女幹部のレイコと同棲するはめに陥るのだが、翻弄されつつ結構これが主人公の救いになっていた。最終的には、”自分”は見つからないのだが、母性的な物に受容されて眠る主人公が皮肉。当時は誰もがすぐ分かっただろう各派の特徴、たとえば、うた声運動で大衆を確保するA派、同じ白ヘルなのにそこに書かれている文字が違うだけでいがみ合うB派とC派、など理解不能の人が多いだろう。むかし、野間宏や中野重治の小説を読んで、6全協や所感派、国際派など注なしには理解不能だったことを思い出す。時の流れを感じた。時代背景は古くなったけれど、居場所や生きる意味を模索する青年という主題は古くない。

田中小実昌作品 宗教以前の祈りの言葉が題名。人間の深い所の感情に触れようとする営み。

開高健作品 中国政治の話と自分の鬱屈がないまぜになり、自己の個人的な体験として描写される。黴様の薄膜に全身を覆われる感覚が開高の鬱屈を端的に物語っている。再読したが、新鮮に感じた。

筒井康隆作品

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