私を痴女にして下さい 浅尾リカ・乃亜 完全版 [DVD] の感想

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　この作品の主役は乃亜ではない。しかし、乃亜が日常生活でおいてどのように他者と対話しているのかが如実に伺い知れる。彼女は、何気なく話し立ち居振る舞うことに魅力を漂わせる女性であるように思われる。例えば、赤い衣装の乃亜は、上半身だけをみせながらもその美貌と微笑みだけで主役の浅尾の存在をすっかり忘れさせる。浅尾は、ある情景で痴女を演じようとして失敗して意気消沈しているところに、染井こと加藤某があらわれ、彼女のペットである自分が乃亜に電話しアドヴァイスをもらうようにと説得し、加藤は乃亜に電話する。同じ家の一室で色紙を制作中の乃亜は、これから身にまとう数着の衣装に囲まれ、関係者に彼女の調子を問われ、それにきっと閉じ頬を横に引っぱりはにかみながら「いいですよ！」と応える。この表情は、いつもの彼女の照れ隠しの顔貌と表情である。その乃亜の何と美しいこと、絶世の美女とはこのことである。彼女がこれほどの美貌を誇らなれば、AV界における乃亜のあり方はかなり違ったものになっていたであろう。その美貌を何倍にも増しているのは彼女がまとっている赤い衣装である。赤色は、だいぶ前に「雌女anthology#017『女の口は嘘をつく』」(アウダースジャパン2005年4月)の付録のインタヴューで語っていたように彼女の好きな色である。批評子には、日常生活ではいつも地味な色の衣装を身につけることを常とする乃亜であるにもかかわらず、この色こそは、彼女の本来の心性である艶やかさへの願望と色事への赤裸々な欲望が表出した色彩であるように思われる。ゆったりと弧を描く長い黒髪、光彩を放つ意志のある眼差し、長く美しい手の指そしてそれら全体を覆い尽くす、陶器のように滑らかで輝きを放つ白い肌は他のどんな女優も圧倒する乃亜の美しさを否が応でも観者に印象付けることになる。このような盛期「乃亜美貌」の頂点にある乃亜の前では浅尾は、所詮朝陽の前の夜露にすぎない。
　　さて、この作品の彼女の情景は、映画の中の映画ともいえる乃亜の撮影現場とそれを窃視する浅尾という設定である。