心の脳科学―「わたし」は脳から生まれる (中公新書) の感想

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参照データ

タイトル心の脳科学―「わたし」は脳から生まれる (中公新書)
発売日販売日未定
製作者坂井 克之
販売元中央公論新社
JANコード9784121019721
カテゴリ » ジャンル別 » 人文・思想 » 心理学

購入者の感想

巷にインチキ脳科学本が溢れる中、本当の科学的な本である。
著者はまず、MRIによる脳活動測定手法について解説し、
その方法によってわかることと同時に、わかることの限界を示すという、
科学的に正しい立場を明確にする。
その上で語られることは、自己の肉体認識など、
一般読者にも十分理解でき知的好奇心をも満たすものである。
特に、脳活動のうち「意識されない」知覚であっても、
他の脳活動に影響を及ぼすということは、大変興味深かった。
このことは、サブリミナル効果として経験的に知られていたのだが、
脳活動測定がそれを科学的に実証したことになる。
すなわち「意識」だけが「わたし」ではなく、
無意識もわたしの一部であるという、フロイトによる
デカルト批判もまた、脳科学で説明されてしまったのだ。
こういう恐ろしい本が、さりげなく出版されているものなのですね。

fMRI・脳機能イメージングの概説書としてはとても詳しく簡潔に分かりやすく説明している。
「fMRIを使った脳と心の研究入門」の本としては大変有益なので5つ星。

まずは視覚という比較的シンプルな情報入力に対する処理から、
そして「意識」「自我」という高次なところまで、
脳機能画像研究の成果が紹介されている。

参照文献もその都度記述してあるので、
元の論文を参照できるように配慮してある。

ただし、正確性を保つため、詳細なことまで記述されており、
新書で「なんとなく知りたい」という程度の読者には情報量が多すぎるかもしれない。

当然、バラエティー番組の「ノウカガク」で疑似科学に興味を持ったという人には科学的すぎるであろう。

5つ星をつけたので、敢えて問題点を列記しておく。

--ほとんどfMRIの研究成果しか出てこない
   fMRIは数多くある研究手法の一つに過ぎないのに、fMRIだけが「脳」の研究というように見える。
   要するに、タイトルが大げさ。
   かなり情報がfMRIに偏っているので、「心の脳科学」の概説書としては不適格。

--クリックに酷似
   分かりやすい入門書はどれも似てしまうので、仕方の無いことかもしれないが、
   話の流れがFrancis Crick "Astonishing Hypothesis"に酷似している。
   ただし、Crickと違いこの本はfMRIのデータばかりである。

--微妙にセクハラ(ひとこと多い)
   科学とは関係ないところで、不必要なコメント・感想(独り言のようなもの)が載っている。
   せっかくの名著なんだから、余計なことは書かなければよかったのに。

なので、「心の脳科学」の本としてはお勧めできません。

「fMRI入門」としては5つ星というだけです。
ただし微妙にセクハラ。

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