ローマ亡き後の地中海世界2: 海賊、そして海軍 (新潮文庫) の感想

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タイトルローマ亡き後の地中海世界2: 海賊、そして海軍 (新潮文庫)
発売日2014-07-28
製作者塩野 七生
販売元新潮社
JANコード9784101181950
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

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 塩野七生の地中海を巡るキリスト教とイスラム教のパワーゲームの第二巻である。

 本巻ではキリスト教側の騎士団が、北アフリカに出向いて、海賊に拉致されたキリスト教徒を
救出する場面が繰り返し書かれている。救出すること自体には違和感は無い。但し、救出の
具体的な方法がお金で買い戻すという「商行為」であった点にはいささか驚いた。

 僕の理解では商行為とは相手に対する信頼が不可欠というものだ。たとえ相手が悪人であって
も商売は出来るということは現在の世界でも同様である。悪人同志が、お互いに自分と相手の両方
を悪人だと理解した上で、信頼関係を結ぶことも可能である。これは「自分がこれを
やったら、相手はこれをやる」という理解の「共有」にほかならない。マフィア同志の連携や連合等も
その一つに違いない。

 そう考えると拉致された人を金で売買するという商行為も、キリスト教側とイスラム教側
の間にある種の信頼関係があることが前提であったはずだ。現に本書でも、お金が届くまでの間に
自らが人質となる騎士の方の姿も描かれている。

 ここまで読むと、今の日本も拉致問題を抱えていることを思いだすしかない。拉致問題が
純粋な人権問題だけでは解決されず、政治問題や経済問題に拡散していく様は、中世の地中海
と余り変わらないのかもしれない。

  

地中海を挟んで、キリスト教世界とイスラム世界(サラセン)が対峙した・・。シチリアは、その地理的位置から、最初に、集中的にサラセンに狙われる。

1を読んでいるうちは、「こりゃ、シチリア島の歴史ハンドブックとしてコンパクトにまとまっている!」という印象を持ったが、両世界の接触はシチリアにとどまらないので、サラセンの海賊が荒らしまわった全域に記述が及び始めると、やっぱり、タイトル通りの「地中海世界」が舞台になる。

この本を読んでいると、地中海沿岸の「一般庶民」が、サラセンの海賊に(海の上だけでなく、自宅にいても!)、ある日突然襲われ、全財産を奪われ、あるいは、奴隷として連れ去られるというリスクが,宝くじにあたるよりはるかに大きな確率で存在していた!というのがヒシヒシと解る。

その奴隷にされた人々を救出(といっても武力でなく、金で!仲介役はユダヤ商人!)する組織が「救出修道会」、「救出騎士団」と二つあり、長年活動していた・・とか、まさに「事実は小説より奇なり」ですね・・。

続きが楽しみだ。8月後半の出版だそうだ。(まあ、単行本では出版済みだが)。

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