地球外生命――われわれは孤独か (岩波新書) の感想

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タイトル地球外生命――われわれは孤独か (岩波新書)
発売日販売日未定
製作者長沼 毅
販売元岩波書店
JANコード9784004314691
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 宇宙学・天文学 » 一般

購入者の感想

本書の『はじめに』を読むと、地球外生命の存在について、基本的に、天文学者や物理学者は確信派で、生物学者は懐疑派なのだそうだ。本書は、そんな確信派を代表する天文学者の井田茂氏と、懐疑派を代表する生物学者の長沼毅氏の共著という、非常に面白い取り合わせの共著となっている。 

筆者は、まず、地球生命について考察することから開始しており、地球生命が生きていける限界を押さえると同時に、地球生命が生まれ、ヒトにまで進化することがどれほど偶然に支配された奇跡的なものであったかを示しており、地球の生成条件が少し変わっていたら現在の地球生命は存在しなかっただろうとしつつ、地球だけを奇跡と呼ぶことはできず、生物にはきわめて大きなバリエーションがあるだろうともいっている。地球外生命については、広く知られている火星や木星と土星の衛星に微生物が生息している可能性を示し、本書の白眉である最終章で、『系外惑星に知的生命は存在するか』という本書の最大のテーマを検討して、非地球型知的生命体の具体像にまで想像を巡らしている。 

驚くのは、我々の住む銀河系内だけでも生命を宿し得る「ハビタブル惑星」が100億個以上あるだろうと見積もられ(さらに、銀河は宇宙に少なくとも1700億個以上あるともいわれている)、しかも、太陽系内の微生物の存在さえ議論されている状況下で、未だに「バクテリアのような生命がいるかどうか」の論争が続いており、中間派でさえも、「もう1個くらいの星にはいるかもしれない」程度で、知的生命となると、確信派の研究者たちも意見が大いに分かれているという現実だ。面白いことに、『おわりに』で、これまで懐疑派だった長沼氏が確信派に洗脳されたといい、確信派の井田氏が弱気なコメントを寄せているのだ。それだけ地球外生命、特に知的生命の存在の有無というのは、現在の人間の英知を超えた問題ということなのだろう。 

最後に、長沼氏の印象的な言葉を紹介しておきたい。「宇宙のどこを探してもバクテリアかアメーバくらいしか見つからないのでは、知的生命体は宇宙に私たちしかいないのだという新たな悲観論になりかねません。私たちはあらためて孤独感をかみしめることになるのではないでしょうか」。 

地球外生命体が存在するかどうかについて、科学的にわかりやすく考察された好著。

本書には5つの章があるが、内容的には前半の3章と後半の2章とに分けることができる。

前半の3章では、生命が存在するための条件を検討している。
第1章「地球生命の限界」では、地球の海底や地底に生きる微生物から、生命生存の条件を探っている。
第2章「地球生命はどのように生まれ進化したか」では、生命の誕生と進化の歴史を振り返っている。
第3章「地球の生成条件が少し変わっていたら」では、地球と太陽の距離、月の存在、地磁気の存在が生命の誕生に大きく貢献していることをまとめている。

後半の2章では、前半でまとめた知識から、生命の存在しそうな星を探し出していく。
第4章「太陽系の非地球型生命」では、太陽系の惑星・衛星について生命の存在可能性を検討し、木星の衛星「エウロパ」「ガニメデ」や土星の衛星「エンケラドス」を有力候補としている。
第5章「系外惑星に知的生命は存在するか」では太陽系外の星について、どのように生命を探そうとしているかがまとめられている。

生物学者と天文学者の共著ということもあり、議論はていねいで根拠もしっかりしている。
専門用語についても初出時にきちんと説明されており、非常に読みやすいと感じた。

生命が存在しそうな星のうち、木星の衛星「エウロパ」「ガニメデ」には惑星探査機を飛ばす計画が進行中だという。
この探査機から、生命の存在につながるデータが得られることを期待したい。

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