銀の匙 Silver Spoon 12 (少年サンデーコミックス) の感想

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　この一言に八軒の行動理念が集約されていると思います。
高校入学以来、八軒は「自分がしたいことは何か」にずっと悩まされてきました。しかし、ほぼ年中無休で働く必要があり、かつ疫病一発で破綻に追い込まれる農業の現状、実際に牧場が経営破綻してしまい夢を全て諦め高校を退学した友人等を見て、「俺は努力が認めてもらえないのが嫌だな」（12巻14ページ）と強く想うようになり、「絆の農場プロジェクト」を立ち上げます。今回はそのプロジェクトを中心に話が展開していきます。
これは勝手な推測になりますが、著者である荒川先生自身、高校生だった頃に似たような想いを抱いていたのではないでしょうか？その時の悩みに対して自分なりの回答が、八軒であり、「絆の農場プロジェクト」だと思います。1話1話が一見軽そうに見えて、とても濃い。これは取材だけでは書けません。というより、著者以外には誰も書けないお話だと思います。

そして今回見逃せないのが、大川先輩です。今まで、どちらかというとお調子者、厄介者という括りだった彼が社長になり、逆に八軒を引っ張っていくようになります。前巻より懸念事項となっている出資問題に関しても

他人様の金をアテにしないで会社を起こす！まずは自分の責任の範囲で豚を売る!!
波に乗ったら名刺と肉と業績記録持っておやっさんに売り込みに行け!!
んで、出資ぶん取ってこい!!
親子とかじゃなく仕事してる一社会人として堂々とやりあってくるんだよ!!

と意見をぶつけてきます。もし彼がいなければ、タマコと延々企画書をいじくって終わっていたかもしれません。最初は大川先輩を社長にすることに違和感がありましたが、ロジックベースの八軒に対し、とにかく行動の大川先輩は相性が良いのでしょう。

他にも、自分の夢に向かって走り出した人、夢を見つけにいった人など、登場人物たちがどんどん動き出しました。八軒の行動が大なり小なり周りの人に良い影響を与えているのだと思います。
　年齢問わず、今の自分に悩んでいる全ての人にお勧めします。八軒の成長ぶりは、現状に思い悩む人達に勇気をくれるはずです。