幽霊名画集―全生庵蔵・三遊亭円朝コレクション (ちくま学芸文庫) の感想

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タイトル幽霊名画集―全生庵蔵・三遊亭円朝コレクション (ちくま学芸文庫)
発売日販売日未定
販売元筑摩書房
JANコード9784480091666
カテゴリアート・建築・デザイン » 芸術一般 » 美術史 » 東洋・日本美術史

購入者の感想

 いろいろな幽霊がいる。美人薄命を体現したかのような若い女の幽霊、枯れ木のような身体に醜く崩れ落ちた顔の幽霊、所在なげに虚空を見つめる幽霊、妖怪“ぬらりひょん”そっくりな幽霊、「幽霊の正体見たり~」を絵にしたような、なんちゃって幽霊・・・。
 薄闇の中、うつし世と幽冥のあわいに、彼・彼女らはひっそりとたたずむ。その顔に浮かぶのはこの世への未練か、生者への恨みの表情か。その唇が紡ぐのは嘆きの言葉か、怨嗟の叫びか。

 明治の東京で、怪談をはじめとした多くの創作落語で人気を博した噺家・三遊亭円朝。その彼が生前、百物語にちなんで「幽霊画を百幅あつめる」と誓い、こつこつと蒐集していたのは一部ではよく知られた話だ。結局のところ、生きている間に百は集まらなかったらしいが、うち50幅は現在、東京・谷中にある禅寺『全生庵』に収められている。
 本書では、その50幅すべてをカラー図版で収録。文庫本なので図版が小さく、細部まで見ることができないのは致し方ない。何点か部分拡大図があるのがせめてもの慰めだ。

 作者は有名・無名・筆者不詳を取り混ぜており、時代は江戸から明治。新しい時代のもので、四条派が比較的多い。
 有名なところでは、円山応挙(ただし、落款なし)、川端玉章、月岡芳年、河鍋暁斎など。変わったところでは、柴田是真、高橋由一、伊藤晴雨あたりだろうか。
 これらの絵師たちの作品は、さすがその名に恥じない技巧を感じさせるものだ。しかし、あまり名の知られていない絵師や、筆者不詳の作品にも題材や構図の妙など見どころがあり、なかにはハッとさせられる悽愴さ、薄気味悪さを感じる作品もあった。
 文明開化にふさわしく、伝統的な日本画の技法に加えて、西洋画法も試みられている点にも注目。
 幽霊画はその性質上、絵師たちが進んで描く題材ではない。酒の席での余興として筆の赴くまま、さっと描いたという作品もあり、落款が入らないものもよく見かける。

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