ペスト&コレラ の感想

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タイトルペスト&コレラ
発売日販売日未定
製作者パトリック・ドゥヴィル
販売元みすず書房
JANコード9784622078388
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » フランス文学

購入者の感想

非常に不思議な感じの小説である。主人公は、ペスト菌の発見者として医学史にその名をとどめるアレクサンドル・イェルサン。小説とも言えるが、このイェルサンの「評伝」とも言える作品である。

イェルサンの生涯を描いているが、その誕生から死までを順に描くのではなく、時間を行きつ戻りつして、様々なエピソードを積み重ね、その姿を浮き彫りにしている。約240ページだが、44の「章」に分かれている。それぞれの「章」には、「昆虫」「ニワトリ論争」などのタイトルがついているが、地名がついたものが約3分の1を占め、その生涯にわたる放浪癖を象徴している。
文章そのものは、独特の言い回しがあるものの、全体に簡潔で短い。読みやすいには違いないが、頻繁な時間の移動や「章」の多いことが、速読を阻み、それだけにイェルサンの時々の姿を強く印象付ける。

ジフテリアの研究で成果を上げながら、リヴィングストンに憧れ、27歳でパストゥール研究所を飛び出した後も、ペスト菌を見つけたり、終の棲家となるナトラン(ベトナムにあり、ニャチャンとも呼ばれる)では、キナの木の栽培を含め農業や牧畜に乗り出し、晩年にはラテン語の翻訳にも挑戦しているように、その行動力と幅広い「知」への欲求の強さに驚かされる。
イェルサン同様、若き日の成功を捨て、海外に雄飛したランボーとの比較、さらにはセリーヌ、パストゥール研究所に集った人々など、19世紀末から20世紀前半の時代を彩る様々な人々が登場し、イェルサンの人生と交錯する。

「謝辞」を見ると、ベトナムのダラットにはイェルサンの名がついた高校があることが分かる。彼がナトランに落ち着いたのが植民地時代だったにもかかわらず、圧制者・支配者としてその地に君臨したのではなく、その地に多くの物をもたらしたことが類推できる。
「訳者あとがき」によると、本書はフランスでフェミナ賞だけでなく、「フランス版「本屋大賞」とでもいうべき「FNAC賞」を受賞」したと書かれている。それ自体は喜ばしいことだが、日本の「本屋大賞」では、こういったタイプ(レベル?)の作品はノミネートさえされないのではないだろうかと個人的には思えてならない。

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