黒い巨塔 最高裁判所 の感想

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タイトル黒い巨塔 最高裁判所
発売日販売日未定
製作者瀬木 比呂志
販売元講談社
JANコード9784062203524
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » さ行の著者

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購入者の感想

 『ニッポンの裁判』『絶望の裁判所』などで知られる元裁判官・瀬木さんによる、最高裁判所を舞台として、主として原発訴訟を扱った司法小説。
主人公は冒頭で最高裁民事局付きとして新しく赴任してくる若き判事補・笹原やその親友で福島地裁の判事補・如月は司法の場で社会に有益な仕事をしたいと考えている良識派ですが、ヒエラルキーの頂点に君臨する長官の須田や二課長の田淵、事務総局総務局一課長の火取などは、まさに権力の鬼。ほかにも民事局長や刑事局長など司法界のラットレースにおいて狡猾に立ち回る者や、学究肌で実力はあるのに統制力や社交力に欠け願望に近づけない者など、多様なタイプの司法官僚たちが生々しく描き出されていて、想像以上に純粋に小説として面白い作品になっていました。 
 本書を一読するとー瀬木さんの新書を拝読した際にもー感じさせられることですがーこの国の三権分立はただの張りぼてであり、司法は本当にいまだ独立なんてしていないのだなと痛感させられます。そして裁判所という閉鎖的で特殊なある種の階級社会のなかでは、心ある司法官僚がいても権謀術数に長けた上層部により都合よく働かされ、いやがらせをされ、抑圧されてしまい、司法は国民の権利を代表した機関ではなく既得権益層の私物のごときものであり、官僚と政治家による「政治」に堕してしまっているということを思い知らされ、本当にこれで民主主義国家とはなんと情けないのか、と悔しくなってきます。
 本当にこの国には、本気の議論も健康な批判も公正な検証もないのです。すべて事前に打ち合わせがなされ、セレモニー化しています。報道機関までも、司法関係者の報道機関への天下りによってその本来の監視機能を失って久しいのです。そして、馬車馬のように働かされているおとなしい日本国民はその事実さえも知らないのか、知っていてもどう行動するべきか判断がつかないのか、もう諦めてしまっているのか・・・。こんな汚れきった司法官僚や政治家の保身のためになされた「政治」によって原発訴訟も担当裁判官の異動(報復人事など)によって切り崩されてしまう、こんな現実を何とか変えていかねばならないはずです。

 ぜひご一読ください。

 

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講談社から発売された瀬木 比呂志の黒い巨塔 最高裁判所(JAN:9784062203524)の感想と評価
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