雇用身分社会 (岩波新書) の感想

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タイトル雇用身分社会 (岩波新書)
発売日販売日未定
製作者森岡 孝二
販売元岩波書店
JANコード9784004315681
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論

購入者の感想

森岡孝二『雇用身分社会』岩波新書を読み、暗然たる想いを禁じえない。日本の経済社会の歯車が逆回転し、音を立てて前近代に向かって崩れ落ちていくようだ。

正社員、契約社員、パート、派遣労働者など労働者の階層がいっそう細分化され、戦前のように身分として固定化されるというのが本書のタイトルのメッセージだ。

前半では最初に女工哀史のような戦前の暗黒工場が回顧され、今日の派遣拡大の経緯、それ以前からのパートの苦渋、そして過労死と隣り合わせの正社員の受難が実例と数字で述べられる。

後半では中間層の分解と貧困層の広がりという労働市場の傾向を政策的にカバーするどころか、官製ワーキングプアなど、逆に貧困化に拍車をかけてきた政府の政策を追跡する。

最後に労働者派遣制度の見直し、非正規雇用を減らす、雇用労働条件の規制緩和を止める、最低賃金の引き上げ、8時間労働制の確立、賃金の男女差別をなくす、の6点を提言している。

賃金が低下し続け、長時間労働と貧困化が進んでいる状況は他の主要国には見られない。それは労働者のスキルが低下していることであり、資本主義の体質が劣化していることだ。

まるでマルクスの資本論を読んでいるようだ。労働者が若年で使いつぶされ廃人にされた産業革命期のイギリスを彷彿とさせる。この150年は何だったのか考えさせる。

序章を読むと、本書でいう「雇用身分社会」とは、働く人びとが総合職正社員、一般職正社員、限定正社員、嘱託社員、契約社員、パート・アルバイト、派遣労働者のいずれかの身分に引き裂かれた社会のことで、ここにあるのは単なる雇用・就労形態の違いではなく、それぞれのあいだには、身分的差別ともいえるさまざまな深刻な格差が存在し、世でいう格差社会への移行は、実は雇用身分社会への移行であったということのようだ。 

筆者はまず第1章で、明治から昭和初期にかけての女工らの奴隷のような酷い働かされ方を概観して、今日の日本でも、そんな戦前の酷い働かせ方が気づかないうちに息を吹き返してきているとしている。 

続く第2章から第4章では、雇用身分社会のうちの派遣労働者、パート、正社員について、それら雇用形態の歴史的変遷と、それぞれの雇用身分が抱える問題点を指摘している。
具体的にいうと、 
第2章では、雇用関係が間接的である点で、かつての女工たちにもっとも近い存在が今日の派遣労働者であり、労働者派遣制度の解禁と自由化によって、戦前の女工身分のようなまともな雇用といえない雇用身分が復活したこと、 
第3章では、パートタイム労働者は、雇用調整の容易な低賃金労働者であるにもかかわらず、基幹労働力の有力な部隊として以前にもましてハードワークを強いられるようになっていること、パートでしか働けないシングルマザーの貧困化が深刻な問題になっていること、 
第4章では、正社員の長時間労働による過労死・過労自殺、正社員の多様化による一般職・限定正社員の低賃金化、総合職正社員のいっそうの長時間労働化、 
などだ。 

第5章では、労働者階級の階層分解が低所得層の拡大と貧困化を招いており、特に若年層に低賃金労働者が占める割合が著しく高まってきたこと、近年の株主資本主義の台頭は、企業に対してコスト削減による利潤の増大を求め、そのためにリストラや、賃金の切り下げや、労働時間の延長などを促す傾向があることなどを指摘している。

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