スタンダーズ VOL.1 の感想

184 人が閲覧しました

NHKのラジオ番組でこのアルバムに収録されている「All The Things You Are」を耳にしたのが初めて聴くキースの演奏だった
というのもあり、個人的に思い入れの深い1枚。名演揃いだが、個人的にはやはりAll The Things You Are。
ピアノ・ソロによる対位法的なイントロに始まり、拍や小節線をかいくぐるようなテーマの提示、４小節・８小節といったフレーズの単位など
最初から取り払ってしまったかのような、自在に生まれては有機的に連なっていくフレーズ、テーマのモチーフの変形を織り交ぜながら
インサイドとアウトサイドを自由に行き来するアドリブライン、そしてそれを後押しするピーコック、ディジョネットの両者のプレイ
しなやかなピーコックのランニングと途中でブラシからスティックへと持ち換えるディジョネットのドラムがスリリング。
そしてピーコックのベースソロを経て、コラールのようなキースのピアノが回帰し高まった熱が徐々に引いていくようなラストテーマへ。
わずか８分程の演奏だが、ピアノ・トリオというフォーマットの持つ力と可能性を思い知らされる衝撃的な演奏だと思う。
結成30周年を迎えたスタンダーズトリオは、本作以降数々の名アルバムを残してきたが
このスタジオ録音のみずみずしい緊張感をたたえた演奏の価値はいつまでも衰えないだろう。

廉価で販売されることが珍しいECM音源が期間限定とはいえこの値段で買えるというのは嬉しい驚きだ。
VOL.2と併せてどうぞ。