科学者は戦争で何をしたか (集英社新書) の感想

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参照データ

タイトル科学者は戦争で何をしたか (集英社新書)
発売日2015-08-12
製作者益川 敏英
販売元集英社
JANコード9784087207996
カテゴリ歴史・地理 » 日本史 » 一般 » 日本史一般

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購入者の感想

益川さんの生い立ちから、名大坂田昌一氏に影響され物理学を志したこと、助手で採用された名大では勉強と組合活動に没頭したこと、太平洋戦争中、戦争に動員された科学者もいたが、論文では肝心のポイントを外していた表現していた朝永さんのような科学者もいたこと、など幼少期から現代に至るまでの益川氏の懐旧談が、強い反戦の意思をもって淡々と綴られている好著である。

安倍政権の安全保障法制の改定と言う時にあたって、科学者としてどうすべきかを、歴史的な事実を踏まえて、ノーベル賞受賞者である作者が書き綴ったものです。
作者は、恩師坂田昌一氏の言葉「科学者である前に人間たれ」を胸に、自らの戦争体験を踏まえて、その論を展開してゆきます。
かつて、第二次世界大戦における「マンハッタン計画」、ベトナム戦争における「ジェーソン機関」といった形で多くの科学者が集められ、原子爆弾の開発などの軍事研究に駆り出されました。
その際、様々な条件をつけたのですが、政権サイドからはその約束は反故にされ、多くの悲劇を生みました。
科学はどんどん進み分業化しており、一人ひとりの科学者が自分の研究の全体像をつかみづらくなっており、デュアルユースの問題もあります。
そうした中で、政府は「交付金」であるが故に、様々な圧力をかけてきており、大学の研究は軍事化を避けられなくなってきています。
(余談ですが、私の母校の名古屋大学が「平和憲章」を持っており、そのことで攻められているとのことです。堅持に頑張って欲しいと思います。)
彼は「科学者である前に人間たれ」と言う言葉を何度も使いながら、若い科学者を含む多くの科学者に、非常に大変だが戦争への加担になる研究を避けるように訴えています。
と同時に、一般の人々に対しても、暗に「戦争」に繋がる政治への関心を持つように訴えている様に思えてなりません。

ノーベル賞受賞の素粒子物理学者による現代社会への警告です.この理論物理の権威は研究室にこもって研究するだけの青白き学者ではありません.研究室から出て,社会活動をも厭わない極めて稀なお人です.「九条科学者の会」を設立し,自らその先頭に立って安保法制,解釈改憲を批判する.熱血が迸り,異論のあるものは出てこい,差しで議論しようではないか,と呼びかけている.こんな科学者を今も昔も私は知りません.益川博士は幼い頃に経験した米軍爆撃に関する話をノーベル賞受賞記念講演で紹介するつもりでいたところ,ある権威から間接的に糾弾されます.アカデミックな場にふさわしくないと言って ----.でも,博士は敢然と口述原稿を変えず,幼児期にうけた戦争体験を話しました.その話をするのが最もふさわしい場だと思ったからです.科学は戦争と深く関わってきました.その最凶悪の例がヒロシマ・ナガサキです.博士の研究室には恩師の理論物理学者坂田昌一先生の書が掲げられていて,そこには ’’科学者は科学者として学問を愛するより以前に,まず人間として人類を愛さなければならない’’とあるそうです.核兵器の開発がどれほどの災厄を招いたか,吾らは身にしみて知っています.科学の進歩は禍にもなる.博士の恩師,坂田先生はそれを憂い,その弟子も恩師の遺志を忠実に受けついで今日に至りました.本書を読めばそのことが如実にわかります.何やら不穏な雰囲気の漂う昨今,右へ右へと流れる潮流をこの辺で止めるためにも本書の通読を皆さんに薦めます.

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