羆嵐 (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトル羆嵐 (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者吉村 昭
販売元新潮社
JANコード9784101117133
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

怖いと思うところは羆にはなんの感情もないところです。人を食欲を満たすためのえさとしかみていない。
人と人が争った場合には相手が痛がったり泣き出しでもしたら手をゆるめます。
しかし羆はそんな憐れみなどというものは一切持ち合わせてはいません。泣こうが叫ぼうが妊婦の腹の中までも食べてしまい通夜の場にさえ乱入します。

わたしは、この作者の作品の多くはハードボイルド小説と考えている。素材をできる限り活かし、主人公の心理描写を極力抑えた乾いた文体で読者に訴える。またルポルタージュ的な面も強く克明にデータが書き込まれている。そのため一般的な小説としては抑揚がなく、読みづらいと思う作品も少なくはない(例えば『桜田門外の変』)。ただしこの作品はそのような作者の特色が極めて成功した代表作の一つであることは間違いない。なにせ素材自体が下手な小説を超えてしまっている。しかしその素材はあまりにも重く、扱い方が難しい。

ストーリー全体を貫くなんとも言えない恐怖感も魅力の一つであるが、読みどころはやはり中半以降、熊撃ちのプロフェッショナルでありながら、村人に忌み嫌われている絶対的アウトロー、銀四朗が登場してからのストーリー展開である。その登場シーンはまるで映画を見ているように情景が浮かぶ。正直、このあまりに魅力的な主人公の一人に思いっきり感情移入してしまった。銀四朗はこう言う。「おれはクマを追うときは夜明けから日没まで山の中を歩き続ける。クマの足は早いが、それに追いつくためにはクマより早く歩かねばならぬ。」まさしく銀四朗は大正時代のゴルゴ13である。

またタイトルついても著者は相当考えた節がうかがえる。読了前にタイトルに感じたその荒々しいイメージが、読了後はなんとも寂しく、一種の悲しさを誘う仕掛けがしてあるところも作者の技量を感じさせ、本好きをうならせる。

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