日本の医療格差は9倍 医師不足の真実 (光文社新書) の感想

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タイトル日本の医療格差は9倍 医師不足の真実 (光文社新書)
発売日2015-02-17
製作者上昌広
販売元光文社
JANコード9784334038427
カテゴリジャンル別 » 医学・薬学・看護学・歯科学 » 医学一般 » 医学教育

購入者の感想

まず脱線が多すぎる。読者に興味を持たせるためかもしれないが、そもそも関心のある人しか買わない本である。あまりに本題から逸れた話が連続で登場すると、結局何が言いたいのかわからなくなってしまう。
一部に独自のデータを引用してはいるが、肝心な部分に、根拠のないか検証不可能な主張が多く、意見を言っているだけという印象を拭えない。医学部の格差が教育格差ひいては地域格差を生じるという議論は明らかに言い過ぎである。いわゆる新設医大ができて30年以上経っている。著者の主張が正しければ、すでにそれ以前になかった地域格差が生じていてもいいはずと思うが、それに関する実証的記述は見当たらない。
医学部配置の地域差の原因は、戊辰の役にまで遡るという主張はその通りかもしれないが、その処方箋が医学部新設でいいのかという議論は全くない。コストは誰が負担する?東北地方ではすでに各医学部の定員の合計は医学部一つ分以上増えている。言い方は悪いが団塊の世代が死に絶えて医療需要が変わったらどうする?医学部新設というポジショントークしかできないと言われても仕方がないと思う。
著者は大学が大好きなようである。そもそも医師不足で問題提起しておいて、最後は大学教育(東大)が心配という展開は、「とりあえず言いたいことを言ってます」という印象で、「話者の誠実性」に大いに疑問を抱かせる。

「実は、わが国で最も医師が不足しているのは関東地方です。逆に多いのは、四国・中国・九州などの西日本です」「医師の偏在は、医師養成機関である医学部の偏在によるものです」。

地方の医者不足が叫ばれて久しい。しかし、本書によるとちょっと意外な側面が見えてくる。人口10万人換算で医師が多い都道府県は、1位:徳島県(304人)、2位:東京都(303人)、3位:京都府(302人)、4位:福岡県(289人)、5位:鳥取県(287人)の順である。その反対に、少ないのは、埼玉県(149人)、茨城県(167人)、千葉県(170人)、静岡県(190人)、福島県(191人)である。なんと、医師不足の下位3県は関東地方に集中している。なぜこんなことになるのか。その背景には何があるのかを説明した本である。著者は東大医科学研究所特任教授。

ある意味、P102の「人口10万人当たりの医師数と医学部数の相関」が全てを物語っている。人口当たりの医師の数と人口当たりの医学部数の間には、確かに明白な相関関係があるように見えるからだ。著者は歴史的な経緯も含めて、そのようになってしまった理由や関連性についての見解を披露している。そして、処方箋として、コストを抑えられるMOOCやメディカル・スクールシステムや授業料負担が楽になる自治医大方式での医学部新設を提唱している。また、全国の主要な国立の医学部・医大についての著者独自の見識、著者の経歴、「医師不足」時代の医師たちへという章もある。

もっとも、ひとくちに医師不足といっても、実際は診療科で違いがあり、特に深刻なのは産婦人科や小児科や救急オペを行う外科医などだが、そのような点については本書では踏み込んで解説されていない。また、前半の野球の話は、本書のテーマとあまり関係があるようには思われない。

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