アメリカを動かす思想 プラグマティズム入門 (講談社現代新書) の感想

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タイトルアメリカを動かす思想 プラグマティズム入門 (講談社現代新書)
発売日2013-02-25
製作者小川仁志
販売元講談社
JANコード登録されていません
カテゴリジャンル別 » ノンフィクション » 思想・社会 » 思想

購入者の感想

 プラグマティズム入門とサブタイトルにはある。前書きに寄れば、昨年3・11以降の日本の政治社会の意思決定過程の無様さを解決するには、世界最強国アメリカ社会で実践されているプラグマティズムが有効なのだという。そこでパース以降リチャード・ローティまでのプラグマティズム解説をですます調で書き綴った1冊。重要な個所を引用し、解説した内容は判りやすいが、巻末の参考文献表に掲載されていない文献からの要約なども、ローティの解説箇所では散見する。主著『哲学と自然の鏡』からの引用がありながら、参考文献表には掲載がない。
 哲学が精確な認識を前提にするならば、引用文献と参考文献の関係はもっと正確であるべきだと思うが。会話やリベラルの意味も、もっと正確に読み込まれないと意味がない。哲学が知の学であり、知を実践する行動規範に至らしめるのが会話であり、ローティの会話理論は哲学者自身が引用しているようにイギリスの哲学者オークショットに基づいている。そしてこの会話にこそリベラルの理論的依拠と説明があることを井上達夫が『共生の作法』で、終局なき問い続け、と定義したように、実践哲学を語るのであればもっと精緻で簡明な説明が必要であろう。
 肩書に哲学者とあるが、先年まで留学してたプリンストン大学の指導教員の講義に依拠する本書は、自著と云えるのか。そして、そのような著書を表した著者は哲学者と云えるのか・・・。小熊が先月本シリーズで出した分厚い『社会を変える・・・』よりは、救いはあるかもしれないが哲学者と云える段階ではあるまい。精々哲学解説者であろうに。ポピュリズム編集の産物か。

 中央公論の推薦新書に挙がっていたので読んでみたが、大学教養課程の教科書的な入門書か。前半1、2章は昔高校の教科書に載っていたパース、ジェイムズ、デューイが確立した「プラグマティズム」の歴史。これは単なる解説と羅列で退屈。3、4章は著者が2011年に1年間プリンストン大学にいた時の経験も含め、アメリカ人の考え方の基礎にあるプラグマティズムを解説する。この3、4章は面白かった。最後の5章の展開は強引であまり説得力を感じなかった。
 
 プラグマティズムをさっと理解するには良いのかもしれないが、解説に終始しオリジナリティに欠け、自説は斬新とは思えなかった。最近の新書は若書きも容認するようだから、売らんかなのタイトルも含めてこんなものかもしれない。

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